加古川ってオカタイのね 

 最近加古川について聞いた噂3つ。

 まず1つ目は、過去に県北の豊岡市で務めていて、加古川に赴任した教師の話。豊岡の学校ではこの教師がIT担当をおおせつかっていた──というより、本人曰く「トシが若いから自動的にそうなってた」──のだが、加古川に来ると学校で教師の机のパソコンがインターネットに接続していないのだという。

 加古川の学校では「内部データが外に漏れないように」とのお達しにより、教員の直接ネット接続が禁止され、教師は調べ物をするときには調べ物専用のパソコンまで移動せざるをえない。

 ほんとうだろうか。

 個人情報の流出に気を使うのはもちろんのことだが、そんなことはどこの企業でもやっていることだ。企業にとって死活問題になる顧客情報や企業秘密もあるが、個人のパソコンに入っていることが多いはずだ。でもちゃんと守る工夫をしている。

 真剣に仕事をしている教師なら、調べ物の頻度は高くなって当たり前だ。また学校内にとどまらずに社会と接点を持とうとする教師には、インターネットは強力な武器になる。というより、すでに現代のバックボーンでありライフラインになりつつある。

 この内部情報を信じる限り、少なくとも加古川市の職員室はネットの恩恵をまったく享受していないんじゃないかという疑念がわく。

 2つ目。加古川で配布されている折り込み形式のタウン誌がある。全国でその地方の情報を掲載して配布しているのでご存知の方も多いだろう。というか、めんどうなので書いてしまうと『リビング播磨』であるが、ある女性記者が曰く。

「飲食店を取材しようとしたら、4軒立て続けに断られました」

 1軒2軒ならまだしも、4軒立て続けに断られつづけてはこの記者もちょっと参ったようすだった。広告を出せと言っているのではなく、あくまで読者に読んでもらうための記事として取材させてくれ、と言っているのである。

 それぞれ「あまりに客が殺到されると困る」とか「静かに商売をやりたい」とか「ブームみたいにやってくる一見さんより、常連さんを大事にしたい」というそれぞれの心意気があるだろうから批判はしない。それにしても4軒連続となると一定の加古川の徴候を示しているのではないかと思ったりする。

 この記者は「どうしてなんでしょうねえ」と意気消沈していた。

 最後の3つ目。最近加古川市の警察官と話をする機会があった。警察官は県の職員であるから、県内をあちこち異動するのである。

 最近お巡りさんはかつての黒バイクより、白いカブ型のバイクに乗っていることが多い。かつて私は新聞配達をしていたので分かるのだが、乗り手がしょっちゅう変わる業務用のバイクはすぐに調子が悪くなる(自分のものじゃないから大事にしないし)。故障が多いので新聞配達所はバイク屋と提携しているのが普通だ。

 新聞配達なら提携先が決まっていてもいいのだが、警察となると困るのだ。緊急事態に即応して現場に急行するのが重要な仕事の一部なのに、各署指定のバイク屋以外では修理ができないのだという。出先で調子が悪くなっても最寄りのバイク屋で修理することができないのだ。仕方なく指定外のバイク屋で修理してしまうと、あえなく自弁になってしまう。

 一事が万事で、燃料すら提携先のスタンドが決まっていて、そこでしか給油ができない。夜中に出動して燃料がなくなってしまうとこれは大変である。加古川署に出かける際に近辺にある指定のスタンドで入れるらしいのだが、このお巡りさんはたいへんに困っている様子だった。「年末なんかスタンドが閉まっちゃって大変ですよ」と言うのである。お巡りさんの使っているのはおそらく90ccのカブなので、燃料タンクが小さい。燃費はけっこういいのだがたいへんだろう。

 現場に急行するときに高速道路を使うときも同じだという。高速道路券みたいなものがあるらしいのだが、それを持っていないと「現場に行かないわけもいかないので、仕方なく自腹切腹」と、そういうことがあるらしい。

 ほ、本当なのだろうか。

 前出の高校教師は部活動の部員のためにユニフォームを作ったとき、これまでの業者ではなくより安い業者に変えてみたそうだ。すると学校から大目玉を食ったという。部員と家族のことを考えれば、安いほうがいいに決まっている、と考えたのだが、加古川ではそういう単純な合理性が通じないことがある。この街はけっこうオカタイ空気がいまだに相当残っているようだ。

 自宅に届いたばかりの『広報かこがわ』5月によると、加古川市の人口は26万7335人。けっこうなサイズの街である(4月1日現在)。しかもそのほとんどはもともと加古川に住んでいた人ではなく、外からやってきた人たちである。一説には8割とも言う。

 そういう人たちにとって住みやすいんだろうか、加古川は。



[2008/04/27 01:22] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(1)

さらば、金物運びし三木鉄道 

 上旬は6日までフィリピンルソン島北部ツアーでマニラから北部の避暑都市バギオ、世界遺産ライステラスのイフガオなどをバスで走り回り、18日、19日は香港に商用で出張、20日から23日までは韓国のカワウソ調査で山中をレンタカーと徒歩でうろつき回り、帰ってきた24日には列車で飛騨行きと、陸・海・空今月はどうやら1万キロくらい移動した。

 今月はとことん乗り物に縁があるようで27日は三木鉄道に乗る。この鉄道は本日3月31日で廃線になってしまう。

 旧友のユージといっしょである。昔からの鉄道好きで、さまざまなタイプの「鉄っちゃん」のなかでは「乗り鉄」に分類される。鉄道以外にも交通関係一般にやたら詳しく、交通機関を切り口に世の中の不思議を理解していく、そういう友人である。社会一般への趣味が昂じて中学校の社会科教師になった。あっぱれ天職というべきであろう。

 厄神駅に集合。そのユージのレクチャーを聞きつつ16時58分発の三木駅行きに乗る。

 廃線は悲しいが、ユージによると「学生も乗らない、年よりも乗らない路線がいままで生き残ってきたほうが不思議」なくらいだという。なるほどそうだ。線路に沿って幹線道路が走っているため、自動車があればこのたった乗車13分の区間を移動するのは10分もかかなない。自転車だってどうってことない距離である。ウィキペディアを見ると、日本でも2番目に営業距離の短い鉄道らしい。

 厄神駅を発車すると、加速するのはほんの短い時間だけ。駅間の距離が短いからだ。だいたい1分半ごとに駅に着く。時速40キロくらいだろうか。駅は古い木造駅とプレハブの新造駅がほぼ交互に現れる。「三木鉄道ありがとう」というのぼりが立っている。

 お別れのご祝儀相場で混雑した車両はなかなか快適な調度である。座席もフカフカだ。カメラを下げた鉄道ファンが多く、録音機まで用意した人もいる。車窓からは三木鉄道の姿をカメラに納める「撮り鉄」の姿があちこちに見える。鉄道というのはほんとうにファンが多い。ウィキペディアの「鉄道ファン」の記述は相当長いのである。

 田園地帯を走ってきた列車ですらないワンマンカーは三木の市街地に突入してこれまた古い木造の駅舎の前に滑り込んだ。

 駅前には古いサクラが今年も芽をほころばせているのだが、このサクラが満開になるころには駅の主はすでにないのである。

 ユージは子どものころに愛する別府鉄道を廃線で失っている。「別府鉄道とおんなじや」といって教えてくれたのが、三木駅構内の線路沿いにある吹き抜けの建物。現在は自転車置き場として使われているが、おそらく昔は荷物の集荷場だったんじゃないか、という読みはさすがに正しかった。建物のハリに「北海道」「●●商事」「発」(おそらく出荷の意)などと書いてある。東京の次には「三条」という文字があり、刃物の名産地である三木と日本海の雄新潟県の三条市との結びつきがしのばれる。

 北海道、三条という文字はわたし個人にとって感慨深い。わたしの先祖は三木の刃物屋で、北海道の開拓期に農業用の刃物を売って大もうけをしたらしいのだ。毎回北海道に行ったら札幌で豪遊していたという。三木の刃物はカマやノコギリなど農耕用の刃物や大工道具が多く、日本の農業がまだ盛んだったころには重宝されたのである。かつては大阪の堺、新潟の燕・三条、兵庫三木、それぞれ日本刀や包丁、銀食器、農業用刃物、大工道具と特色が際立っていた。私の父も同じ金物を扱う仕事をしており、昔から三条市への出張が多かったのである。

 集荷場の柱は太く、きちんと金物で補強されている。重量物を大量に出荷するため頑丈な建物が必要で、金物が豊富だったこの街の歴史を物語っている。

 駅を出て神戸電鉄の三木駅まで歩く。15分くらいかかるので、乗り換えにはめんどうな距離だ。これがつながっていれば三木鉄道にもまだいくばくかの望みはあったかもしれないと思うが、実際にはそれも厳しいであろう。集荷場からみるだけでも三木鉄道は貨物の取り扱いが多かったことを思わせるのだが、三木の刃物産業が凋落をたどり貨物・人とも移動が減ったこと、輸送手段の中心が鉄道から自動車にシフトしたこと、すべてが三木鉄道には厳しい状態になっていた。厄神駅で国鉄と接続していて金物の運送に便利だったのが、おもに運ぶのが人になってしまうと直接神戸に出られる神戸電鉄にはかなうまい。

 三木の街は商店の看板や屋号どこを見ても「刃物卸」「刃物製造」など刃物一色である。粋な古い旅館もあり、往時は繁盛したのだろう。

 日本は自動車で物を運ぶようになってしまい、物の輸送過程をほとんど見ることがない。すさまじいドア・トゥー・ドア&ジャスト・オン・タイムのシステム構築力である。宅配便などほとんど荷物を「電送」しているように感じることすらある。映画「ザ・フライ」は物体の電送機械に人間が入ったところ、ハエが機械に紛れ込んでいたことからハエ人間ができてしまうのであるが、あんな機械もう発明する必要ないのではないか、とすら思う。クロネコとサガワでじゅうぶんである。

 荷物の運搬について思うこと。

 外国を旅行していると物が人間といっしょに運ばれているのを見るのがとてもおもしろい。パラグアイでもフィリピンでも中国でも、人々は重い荷物を平気で手で運ぶし、バスや船、列車もその能力の限界まで人と荷物を積んで走っている。重いものを運んだり荷卸しをしたりしている人間というのはとても絵になるのだが、日本の町を旅して写真を撮ってもいまいち絵にならないのはそういう人々の力技や身のこなしが見られなくなってしまっているからでもある。

 写真を専門にしている友人に「日本って絵にならんよな」と言ったら「それは撮り方やろ」と言われたが、肉体の躍動感がなくなった日本は、私にとっては明らかにおもしろくない風景である。写真機は構図など理屈で説明できる部分もあるのだが、それは後付け。いい写真というのは瞬発的に撮影されたものが多い。木村伊兵衛賞を最近受けた梅佳代の『うめめ』などを見ても、体で撮っているのがよく分かる。いちいち考えて撮っていてはあんなインパクトのある写真は撮れない。とくにスナップというのは難しいのである。それに比べると風景写真は簡単。

 体で感じて撮る写真が日本では撮りにくくなっていると思うのである。鍛冶屋の火花も消え、重い金物を力まかせに運んできた鉄道も消える。

 今年は桜よりひと足早く三木鉄道が散るのである。



 追記:感慨とともに往復2時間弱の旅を終えて厄神駅に戻ってきたら、駅の駐輪場に置いていたバイクが盗まれていた。3台あるバイクの中でもいちばん大事にしていたホンダのCD125T。キーを付けたままだったのである。痛恨事とともに忘れられぬ三木鉄道の旅になった。目撃したかたはぜひともご連絡をいただきたい。薄謝ながら御礼を進呈いたす所存です。ナンバーは「ひ912」。


(2008年4月27日の追記)
 上で触れたバイクが、このほど発見されました。探してくださったみなさんどうもありがとうございました。おかげさまでウインカーとクラッチレバーなどこまかい部品が外されていたのみで、4万円ほどでもとどおりに修理できました。



[2008/03/31 02:58] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

参院選が始まる。鴻池氏が演説に来加 

 参院の選挙戦がスタートした。恒例になった候補者リストを掲載しておきます。

 私は、参議院選挙より市会議員選挙のほうが民主主義の根本として大事だと思っています。自分のいちばん身近な市会議員選挙に興味がないのに、兵庫県で5人しか候補者がいない参院選に興味を持てといっても無理な話だなあ、というわけです。

 選挙区も広いし、これまでの選挙の記事より気合いの入ったレポートが掲載は難しいかもしれません。

 とはいいつつも、とりあえず候補者4人(西田氏は看板に写真がなかった)のご紹介を。

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鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)
66歳・自民・現職

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原和美(はら・かずみ)
57歳・9条ネット・新人

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堀内照文(ほりうち・てるふみ)
34歳・共産・新人

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辻泰弘(つじ・やすひろ)
51歳・民主・現職

西田幸光(にしだ・ゆきみつ)
49歳・無所属・新人


 14日は台風4号の接近で強まる雨の中、午後2時から鴻池祥肇候補がJR加古川駅前で街頭演説をした。あまりの雨の強さに、集まった人は40人程度でそれもほとんどが支持者。通り掛かりの人はほとんど足を止めない。

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 鴻池氏は「道徳教育を推進すべき」と声高に訴えた。仁・義・礼・智を引き合いに出し、「礼儀・恥・道徳を教えることが道徳教育だと思っている」と訴えた。「私は憲友を改正しますよ。誇りの持てる日本を作り直そう」

 私が小学生のときにも「道徳」という学習時間があり、それが部落差別などを知るきっかけになったのは事実である。実態は部落差別学習であった。

 いまは道徳などという微妙なところにまで国の教育が足を突っ込んでくるのはごめん被りたい。親が何もできないから国がやってやろうということではないか。

 そんなことまで国にまかせたくない。国の教育を嘆く前に自分の目の前の生意気なガキをきっちりしかることのほうが今の日本には大事だろう。そして自分の子どもが見知らぬ人に怒られても短気を起こしたりしないこと。共同体の教育力を信じて引き出すことのほうが大事だ。

 小売店では、店員が店内でふざけている子どもを注意すると、親が逆ギレすることがけっこうあります。で、店員が注意するのをためらってしまう。こんな単純な悪循環に気付かない大人がはびこっているうちは、仁・義・礼・智を学校で教えてもまずムダでありましょう。




[2007/07/14 18:56] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(2)

公職選挙法は普通の法律ではない 

 加古川市にはBAN-BAN TVというローカルテレビ局があって、ここが最近FM放送を始めた(さらにフリーペーパーも始めた)。FM局のチャンネルは86.9MHz(ハローナインと宣伝している)。加古川市・高砂市・播磨町・稲美町の全域で聞くことができ、渋滞情報が

「野口交差点から0.3キロ」(たった300メートルか!)

などとミクロなところが朝から微笑ましく、また、都知事選のニュースをやっていたかと思ったら、次のニュースが「●日●時ごろ、加古川駅前の国道2号線で引ったくりがあり……」などと思わぬビックリがあるのでおもしろい(加古川周辺では1キロ以上の渋滞はほとんどないらしい)。ケーブルテレビではあまり手が出せていなかった報道分野にも加古川警察からの犯罪情報や神戸新聞のニュースなどと進出している。どこそこで火事が発生したので、近隣の方は気をつけて、などという情報もこれまでどこからも手に入らなかったものだ。がんばれBAN-BAN ラジオ。

 この第3セクターのケーブルテレビには「番組フォーラム」という場があり、一般市民から番組のアイデアや運営の方向性について意見を求める機会になっている。その番組フォーラム委員をさる縁からおおせつかって1年になった。バンバンテレビについての情報も職員を経由していちはやく入ってくる。また「人口が多いばかりでいまいち元気がない」という定説の加古川で、なかなか面白い人が職員にいるのだということがわかって同志的連帯感を抱いたりもする。

 最近ある若手職員と選挙の話になった。

 テレビで選挙報道をしようとしたことがあったとらしい。公職選挙法違反にならないよう事前に調べたらしいのだが、そこで行政担当者に言われた言葉といって紹介してくれた。

「公職選挙法というのは、そこに書いていないことはやってはいけないという法律なのです」

 イスから落ちそうになった。このブログで私が選挙についての意見を書いているが、Webについて公職選挙法にはまったく書いていない。選挙についての情報のあまりの少なさに怒り、候補者のポスター写真を1枚1枚撮影し、当落線上にある候補者などへの取材をして記事を書いた。もちろん公職選挙法を読み、Webで記事を書くことが法律違反にならないかを確認してからである。

 何度でも書くが、この公職選挙法は「チョウチンの数は1事務所1つまで」などと書いている部分はあっても、Webに関する記述はいっさいない。大昔の法律そのままだから当たり前だ。

 行政担当者からおどされて、BAN-BAN TVは選挙報道はあきらめたと言った。私の場合はWebに書くことによって法的な問題が発生しても責任を引き受けるのは私1人だから、「ええい、やっちまえ」とブログで選挙についての記事を書いた。もし逮捕されでもしたら、それこそ逆にネット上で大問題になるだろうと思い、確信犯として書いたのだった。

 その後、ネット新聞JANJANでも地方選挙についてのコーナーができるなどの動きがあり、私が逮捕される可能性は下がったわけだが、それにしてもこの

「公職選挙法というのは、そこに書いていないことはやってはいけないという法律なのです」

という行政担当者の認識は何なのだろうか。そんな法律認識が通るなら、行政のいいように自治体運営ができるという思い上がりを自ら述べたことになる。

 法律改正で公職選挙法がどう変わるか分からないが、モロにリアル世界の出来事であり、旧態依然・談合体質の塊である選挙と、Webの世界はどう折り合っていくのだろうか。


[2007/05/10 02:50] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

お魚救出作戦にいくら使ったの? 

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ニュースふぁいる「お魚救出作戦」

 加古川市新神野2付近の加古川下流で17日夕、水たまりに取り残された魚の救出活動が行われた。午後3時ごろ、国交省姫路河川国道事務所に住民から「浅い水たまりに魚が数百匹いる。助けてあげて」と通報があった。

 事務所の要請で民間業者が出動し、本流から約100メートル離れた場所に約20メートルの水たまりを発見。人の足首ほどの水深しかなく、コイやフナは背びれを見せながら水をはねていた。作業員16人が車の前照灯で照らしながら網などで次々にすくい上げ、本流へ逃がした。同事務所は「雨が少ないため水が減り、流れから取り残されたのでしょう」。(家)(神戸新聞2007年4月19日朝刊)
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 ハズレ。水の少ないところにコイやフナがわざわざ入り込んだのです。産卵期だからね。

 この時期はコイの仲間(フナも仲間です)の産卵期です。魚は本流から細流へと川を遡り、浅い藻場に突入して(「乗っこみ」という)、もんどり打ちながら産卵・放精します。複数のオスがメスを追いかけまわす、ヒキガエルの「カエル合戦」の川魚バージョンというわけ。

 つまり増水した川から水が引き始めると、氾濫原から本流に水が戻っていく。その細い流れに向かってコイやフナがわざわざ遡っていったというわけです。

 いいかげんなコメント採用しちゃったもんです。実際にはこういうところに記者の想像力・推理力が試される。魚がなんで大量にこの時期に取り残されたのか。

(推理)事実、少しまとまった雨は降った。

(推理)が、そんなことでいちいち数百匹の成魚が死んでいたら、魚がいなくなってしまう。

(推理)そういえば去年の台風の時に岸に取り残されていたのは稚魚ばかりだった。

(推理)なぜだ。

調査開始

こうなればよかったんだけど。ちなみに新聞記者はこんなふうに調べずに書くとき、ちゃんとカギカッコに入れて自分の責任を回避します。ズルいね。経験的に分かります(泣)。

 まあ毒にもクスリにもならない魚の話ではあります。それより、たった200匹助けるために税金いくら使ったのかが気にかかる。そっちのほうがニュースじゃないか?

 もうひとつの切り口として、16人派遣するほうもするほうだけど、「助けてあげて」と通報するほうもするほうだ。助けたいなら自分ですくえばええがな、通報者さん。

 どちらにしても、成魚200匹だけ救い出しても、すでに周辺の草には受精卵が何万、何十万、何百万と産み付けられているでしょう。国交省に「こんどはタマゴ数百万個が干上がりそうです」ってもう1度電話してみたら、作業員が50人くらい来るかもね。

 浅薄な動物愛護が大キライなので、ちょっと本日はイヤミ目に。




[2007/04/22 03:14] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(1)

井上候補落選 

 兵庫県議選で現職の井上ひでゆき候補が落選した。大敗といっていい負け方だった。

 加古川市役所に近い住宅地の中に設置された井上候補の選挙事務所。夜9時ごろだったか、開票の模様を伝える第1報が届く。まだ票数に差はない。すべての候補の票数は500。

 それが第2報で差がつき始めた。折悪しく、テレビの選挙速報番組に出ている評論家が「播磨地区では最近の選挙で現職の落選が続いています」と縁起でもないことをしゃべっている。イヤな雰囲気である。

 第3報では一気に3000票以上の差になった。すでに挽回不能である。「腹立つなァ」と舌打ちをしてそそくさと帰る人。「本人が来るまではおったらな」などと独り言をつぶやいている人。

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 15分後、選挙事務所に井上候補がやって来て、選挙事務所代表らとともに支持者に頭を下げた。

 「すみませんでした」と何度も何度も一同でわびる。自民党の渡海紀三朗衆議院議員もいっしょである。事務所の手伝いをした若者の何人かは涙にくれている。その後は、井上候補1人が、支持者全員に1人ずつおわびを述べつつ頭を下げて回るのであった。

 驚いたのは、支持者の多くがふんぞり返ったままであることだった。頭を深々と下げる井上候補を前にして、ねぎらいの言葉やはげましの言葉をまったくかけない人がほとんどである。このジェスチャーはそのままストレートに「怒り」の表現ととっていいのか、あるいは事態の整理をつけかねているのか。

 なんにしてもその沈痛さはお通夜を上回ったのは確かである。目の前で人が死んだようなひどさだった。

 井上候補の落選については「かつての支持者を失った」ということに尽きる。あたりまえだけど。

 彼と初めて会ったのは2001年。兵庫の川サミットという河川環境保護NGOの集会だった。加古川市がホストになり、環境保護活動団体が加古川に集まり、川の現状について話し合った。

 その準備会合にやってきたのが井上議員だった。

 知人から請われて県議補選で「市民派」を標榜して立候補し、さまざまなラッキーも重なって当選した直後だった。半分冗談みたいな当選だったそうだ。若干31歳。県議とは思えない「そのへんの兄ちゃん」然としたたたずまいに驚いた。その後、私も参加していたワッチ加古川という若者団体にも参加してくれ、たびたび顔を合わせることになった。いろんな集まりに参加すると、必ず顔を出していて、熱心な人だなと思ったものだ。

 その後、井上議員は2期目に当選。そして、自民会派入りを決断した。

 市民派が自民党推薦になるというのは一般市民からみてかなり飛躍がある。それでも、無所属の市民派議員を通して力不足に嘆くよりは、自民党に所属して力を得たほうがいいと判断した。無所属の議員と自民党の議員では、県職員が持ってくる情報にすら大きな違いがある(そんなことあってはならんのだが)。

 さらに、国政の自民党とは違い、県政の自民党はどちらかというと「いろんな地方のおっちゃん集団」という色が濃い。「まま、とりあえず自民党」的な性格もあり、そこには市民派井上の存在を許す間口の広さもあった。

 だが、自民会派入りは、市民派井上がポリシーは守ったままさらなる力をつけるためならよかったのだが、そうではなかった。かつて支持してくれた無党派層を明らかに失ってしまったのである。

 選挙の事務所でみた支持者の層は明らかにこれまでの井上議員の支持層──地元の生活環境を変えようとしている人びと──とは違っていた。実業家とその周辺ばかりである。つまりスーツ姿で脂ぎった人びと。市民活動をやってきた人はわりと端の方で遠慮がちに座っていたのが印象的だった。

 同じ自民党候補の釜谷研造候補との違いもはっきりしないし、無党派層のうち、「格差社会の下の方」を取り込む力は星原候補のほうが強かった。

 井上候補のかつての支持層への説明不足を第一の原因に挙げたいが、それ以外にも今挙げた「格差社会」や、今回特有の選挙事情もあった。たとえば県議会議長職を狙っているといわれる釜谷候補は、今回が最後の選挙ということで同じ自民会派の井上に票をくれてやる気は毛頭なかったし、共産党は周辺自治体で無投票選挙になったので、選挙運動員を加古川に動員できたそうだ。

 かつて井上候補を支持した無党派層のうち、格差社会の上の人びとは今回選挙運動を活発に行った釜谷議員に流れ、下の人びとは星原候補に流れた。結果としての大敗だった。

 ちょっと旧聞になってしまった選挙だが、こんなふうに分析している。


 落選が決まり人もまばらになった井上事務所では有力な支持者らしき男性が
「そいで、次よ」
「自民党から絶対2人は通れんですよ」
と次期にむけた話が始まっていた。

「ボランティア活動が、高じて政治活動になった」と語る井上候補の肉声とのズレを感じながら、降り始めた雨の中事務所を去る。




[2007/04/21 14:13] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

共産候補どこまで伸ばす? 2007兵庫県議選 

 星原幸代候補(64)の事務所は加古川市を東西に走る国道2号線ぞいの同市本町にある。寺家町商店街のはずれ、町家の集まる下町地区にあって、いかにも都市住民に支持者が多い共産党候補らしい。入口には徴兵制反対を訴える短歌が貼り出してある。

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(国道2号線沿いにある星原候補の選挙事務所)

 直接星原候補に話を聞くことはできなかったものの、選挙事務所で同党の東播委員長である青手木学さんにインタビューできたので、共産党の今回の選挙の見解として紹介したい。

 今回の選挙運動はこれまでにない手応えを感じている。「神戸製鋼問題をはじめ、地域の怒りが直接事務所への電話などの反応として現れている。格差が広がる中でオール与党体制に反対する人が増え、確実に共産党の支持基盤も広がっている」

 格差社会が生んだ生活苦が共産党の追い風になっているというのだ。

 確かな追い風を感じている。市民から直接電話がかかってきたり、配布するビラを受け取ってくれる人の反応がいいのもこれまでなかった傾向だが、それだけではない。加古川に応援演説に訪れた自民党や公明党の幹部から共産党を敵対視する発言が出たのである。共産党を敵として恐れはじめている証拠だという。

 今回の選挙のゆくえにいちばん影響するとみられるのが、前々回・前回の県議選で「市民派」を強調して当選した井上英之候補(36)の票のうち星原氏に流れ込んでくる票である。井上議員は訴える政策は市民派・生活主義のまま、実力を行使するために自民党に属するという決断をした。しかし左派寄りの投票行動をしてきた市民から見れば、井上候補の決断は市民派から自民党に鞍替えしたように見えて一見印象が悪い。

 「(星原候補は)大化けする可能性があると思っています。1万8000─2万に近い票数になる可能性があるのではないか」。青手木さんは展望を語る。市会議員のうち新社会党の松崎雅彦議員、井筒高雄議員の強いバックアップを得ているうえ、「名前は出せないが他の保守系市議会議員にも支持を表明してくれている人がいる」

 共産党は県議会(定数93)では8人と少数にすぎ、また提案はえてして多数派の自民党議員の反対にあう。「いいこと言ってても実現できない」という定評も聞こえる。この日も「加古川市に星原氏はなにをもたらすのか」と問うと明瞭な答えは返ってこない。えてして県の大型事業への反対などが先に上がりがちで、相変わらず共産党的な大ぶろしき感が否めないのは事実だ。5選を狙う釜谷研造候補が地元への事業誘導を明確に打ち出しているのにたいして、抽象的になりがちな政策議論にどこまで投票者が反応するか。

 前回の選挙では約8000票とふるわなかったが、ここで巻き返しをはかり、悲願の県議当選にむけて7日の選挙運動最終日を戦う。

【参考】
2003(平成13年)県議会議員選挙結果
1釜谷研造(2万5061票・当選)
2つくだ助三(2万4800票・当選)
3宮本博美(1万5818票・当選)
4井上ひでゆき(1万2472票・当選)
5星原さちよ(8060票・次点)
6ひだ佳典(6091票・落選)

当日有権者数20万5992人
投票率45.41%(9万3538人)



[2007/04/07 03:57] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

落選の可能性は3人 2007兵庫県議選 

 このたびの県議会議員選挙で、加古川市選挙区から出馬するのは5人、うち4人が当選する。落選する1人は

井上英之候補
釜谷研造候補
星原幸代候補
(50音順)

の3氏のいずれかである。

 なぜ他の2人は落選しないのかというと、岸本一尚候補(46)は初出馬の新人だが、基盤の創価学会が約2万5千の票を集めるから当選は確実。また、宮本博美候補(63)は神戸製鋼の労組を一大支持基盤として持っているので、落選はない。こうして残る3者のうち1人が落選するわけである。

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(3月31日夜、尾上町の選挙演説会で気勢を上げる釜谷候補と参加者)

 すでに4期の連続当選を果たしてきた釜谷研造候補(75)は自民党の県議団幹事長を務めている。しかし御年すでに75歳。今期当選して5期目を勤めた後は勇退する可能性が高い。求心力は失われがちで、支持者の中には「ポスト釜谷」にむけて布石を打つ者もあるという。

 つまり同じ自民会派に属するようになった井上候補への票のスライドがどれくらい起きるか、である。

 実際に30日に尾上町で午後7時から開かれた選挙演説会に行ってみると、参加者は90人。この数はかつてよりずいぶん少ないらしい。加古川でこれまで釜谷候補に義理立てするために演説会に参加してきた支援者が、同会派で将来の長い井上候補に顔を立てるため、あえて釜谷候補の演説会に行かない選択を取っている可能性がある。心情的にはこれまで同様に地元への公共事業の誘導を進めてくれそうな釜谷候補を選びたいが、次の選挙にはいなくなる候補として見ている実業系市民もいそうだ。

 ここが釜谷候補のアキレス腱である。前回2003年の県議選ではトップ当選を果たし、木下正一前加古川市長や渡海紀三郎衆院議員との太いパイプを強調する同候補。井上候補との同会派対決で票をどれだけ維持できるかが見どころである。

 一方の井上候補だが、この若手候補にも弱みがある。「市民派」「生活重視」を訴えて2回当選したのに、今期議員を務めるあいだに自民会派に参加するといういっけん「裏切り」とも取れるチョイスをしたことだ。

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(3月31日夜、尾上町での演説会で話す井上候補)

 井上候補の周辺に取材しても本人にインタビューしてもこれまでどおり生活重視の姿勢は変っていない。今期に実現に向かって進展させた35人学級制度を大きな実績としたいところだ。

 しかし「ポリシーを保ったままの自民への鞍替え」がどこまで一般に理解されているのが大きな疑問として残っている。「弱み」は実際には自民会派に属したことではなく、説明が足りないことだろう。井上候補自身も「説明は十分ではなかった」と言う。市民一般に配布していた県議会レポートも最近になってようやく再開したところだ。

 たしかに県議会における自民会派は国政とちがい「いろんな議員の寄せ集め」的な色が濃い。議員を左右で分けるなら、かなり左寄りの議員も含まれている。また、旧左派が求心力を失ってしまった現状からいえば、無所属だった同議員が実際の政策提案能力を持つために自民会派に属するのも現実的な選択肢といえる。

 だが、市町と国のはざまにあって県政はただでさえ見えにくい。前回・前々回の選挙でそれほど県政に興味のないままに「市民派井上」になんとなく投票した多数の市民の脳裏には、井上議員の立ち位置は大きな疑問符が付くだろう。

 残る1人の星原候補については取材をした後でくわしく書くことにしたいが、共産党の候補ということで一定の強い基盤がある。前回の県議選での得票数は8000票。これに加えて星原候補が利としたいのは、上のような理由で井上候補から流出する市民派票である。

 実際に井上候補の選挙演説会では、選挙事務所代表のあいさつのなかで「過去に井上支持だったグループの中に星原陣営に流れたところがある」との懸念が語られた。



[2007/04/04 04:20] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

復活 

 しばらく更新を休止していたWatcherを再開する。ちかくブログの体裁も変えるつもりでいる。

 この1年弱ブログを書いてきたが、かなり書けなかったことがある。ブログのテーマを加古川市と兵庫県、自然と動物にしぼったので、書けずに腐ってしまうネタがけっこう出たのであった。

 ブログを作るときには、特定のテーマに絞ったほうが読者が付きやすいというのが定説である。なるほどと思い、従ってきた。加古川市と自然のことが書いてあるブログだと思ってもらったほうが「対外営業的」にはいいのである。

 しかし私個人としてはもっと自分の考えたことや単なる思いつきを含め、長短まじえて乱射ぎみに書いていきたいという気持ちがあった。ネタを死なせるよりは、たとえ1人でも人の目に触れるほうがいい。形になっていないアイデアなど存在しないも同然だ。

 これからはちょっと地元加古川市や自然のことから離れたことも書いていく。自分のポートフォリオのようになってくれればいいと思う。

 復活第1回は県議選の記事だ。

 わたしも若い頃に選挙の候補者ポスターを見ていたころは、どの候補者も同じに見えていた(あたりまえだ。ポスターしか見てないんだから)が、ちょっと内情を知るようになるとおもしろくなってくる。選挙がなぜおもしろくないかというと、参加しないからだ。しかも選挙をエンジョイするための基礎情報というのはたいしたものではない。

 たまたま加古川の選挙について調べているうちにこのサイトにたどり着いた人がちょっとでも選挙を楽しめればと思って昨年の市議会議員選挙につづいて選挙情報を書きつけるのである。

 昨年の市議会議員選挙を書いたときには候補者情報がネット上にあまりにも少ないのに驚いた。選挙管理事務所に問い合わせてもそういうサービスはないという。「●月●日は投票に行きましょう」なんてチラシの入ったポケットティッシュを配っても投票率など上がるわけがないのに。そこで公職選挙法違反でないことを確認してから自分で36枚の選挙ポスターを1枚ずつ写真に撮り、当ブログ(http://kakogawawatcher.blog54.fc2.com/blog-entry-44.html)に掲載した。

 公職選挙法には、選挙事務所に使用するチョウチンは1つに制限するなんてことは書いてあるが、ネットについては書いていないのである。

 その後、ネット新聞JANJAN(http://www.senkyo.janjan.jp/)に地方選挙のページができた。そして今回の選挙ではYouTubeに政見放送が掲載されているのが問題になっている(http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/nationwide_local_elections/)。時代の変わり目というのはこんなものだろう。現実に法律がまったく追いついていない(それにしたってチョウチンは時代遅れだとおもうが。詳しく知りたいヤジウマ根性あふれる人は公職選挙法143条(http://www.houko.com/00/01/S25/100.HTM)を参照。)。

 なにはともあれ、4月8日は選挙に行こう(注)。


(注)じつは期日前投票したほうが賢明ですよ。8日は行楽地が空くはずですから。花見にもちょうどいい時期ですし。
[2007/04/04 03:39] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)

どこまでのさばる気か 神戸製鋼が住民説明会 

 27日夜、加古川市の南部、尾上町養田の養田公会堂で神戸製鋼所(神鋼)の地域説明会が開かれた。主催したのは若宮小学校区の8町内会のうちの6町内会だった。この地区は加古川の中でもっとも同製鋼所加古川製鉄所に近く、煤煙(ばいえん)・粉塵(ふんじん)の被害がもっともひどい地域の一つである。

 神鋼側からの経緯説明と今後の対策について簡単な説明のあと、質疑応答に移る。住民側からはかなり感情的に怒りを表明する発言が目立った。

「謝罪が少ない」
「即刻生産を中止してください」
「どこに企業倫理があるのか」
「(神鋼の報告は)県や市にへの報告書をそのままページ数を減らして持ってきただけではないか」

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発言者の中にはあらかじめ
「返答はいりません」
とわざわざ前置きし、怒りをぶつけるだけの発言も多かった。もったいないと思う。確たる約束をしないでいいのなら、神鋼は痛くもかゆくもない。たとえば「盗みをやってしまいました」と自ら認めて現れたドロボウに「謝罪が少ない」とたんに言い募っても、「申しわけない」と繰り返すだけだ。百の言葉よりも一の行動である。

 唯一言質を取ったのは「健康相談の費用は神港側が負担するのか」との井筒高雄市会議員の発言に神鋼側が「その用意はあります」と答えた場面だけだった。

 身体にどれだけ影響があるのか心配です、という質問、たしか女性からの質問だったと思うが、これに対しては越智加古川製鉄所副所長は余裕の表情すら見せつつ「原料は鉄と炭素でできていますから、体には影響のあるものではありません」と発言しただけである。これしきの発言でケムに巻かれては、いかにも御しやすい住民集会と思われたことだろう。悔しい。

 私も3点の質問を放った。会がそのまま終わってしまおうとするのにイラついたからでもある。

1 健康被害についての保障をどれだけやる気があるのか。
2 粉塵にしても煤煙にしても、明確な目標値を出すべきだ。
3 第三者による監査を設けるというが、公正性をどうやって保証するつもりか。何人の機関になるのか。

 答えは

1 法の基準を守っており煤煙の健康への害はないと考えている。
2 煤煙については定められた基準値を守ることが目標。粉塵については、数値目標はこれから検討する。
3 これから具体的に明らかにしていきたい。少なくとも複数人数の監視機関になる。


 前回当ブログで書いた不祥事企業たるパロマや松下電器は一般国民を直接の消費者としている。だから一般の使用者が「パロマ、松下製品を使わない」という最終的なキャスティングボートを握っているわけだ。しかし製鋼業は被害を受けるのは住民なのに、周辺住民が神戸製鋼の製品をボイコットすることはできない。これが、住民を前にしてもまだ余裕を持っていられる理由のひとつだ。

 会での答弁にも横柄さがにじみ出ていた。

 火災や人身事故を繰り返し、総会屋との関係が明るみに出、排煙のデータを長年に分かって改竄(かいざん)までしていた神鋼。それでもこの夜の報告の中で「これまでも環境対策に努力はしてきましたが……」などといけしゃあしゃあと何度も強調するのである。「もっと謝るべきだ」という住民感情との間には深い断絶を感じないわけにはいかなかった。

 で、これまで環境問題についてどういう研究をしてきたのか。会が終わってから環境防災管理部の代表に幹部に食い下がって尋ねた。

──これまで神鋼が健康に悪影響を及ぼしている可能性についてどのくらい調査ができているのか。

「鉄分と炭素というのは体に悪いものではありませんから、悪影響は……」

──そんなこと聞いていません。純粋な鉄分と炭素だけを出しているわけではないでしょう。

「そういった詳しい体への調査についての調査はこれまでありません」

 結局自分たちが住民の健康に与えている影響など考慮してきていないのである。大気汚染という複雑な汚染がうまい隠れみのになっている。 この担当者に名刺交換を願い出ると、「名刺は持っていない」という。「わざと持ってこなかったんですか?」とイヤミを言ってみると、

「わざとというのはなんですか」

と気色ばんで答える。そんなこと言えた義理かね、あんた。


 しかし、私を含む加古川の市民が、これまで神戸製鋼にやってあたりまえのことを要求してこなかった。ここにも神鋼を増長させた大きな理由がある。

 この会に参加した住民は百数十─二百人の間だったろうか。ほとんどが中高年で若者の姿は見当たらなかった。発言していたのも年配の「ご老体」と形容したほうがいい人たちばかりである。ようやく神鋼に説明を要求した6つの町内会だが、この会に若宮小学校区内の2つの町内会は参加していない。町内会長が参加しないことに決めたそうだ。ある町内会長は

「おかしいやろ。そういうところに問題が現れとる」

とほのめかすのである。



(注)煤煙と粉塵 簡単にいえば煤煙とはケムリ、粉塵とはホコリのことである。煤煙問題とはエントツから出る排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)のことで、神鋼問題はこの煤煙の排出データを改竄していたことが発端となった。しかし、時の経過とともに、より抽象的な煤煙問題から、住民が以前から洗濯物やあまどいにたまる黒いチリとして腹にすえかねていた粉塵問題に争点がスライドしてしまった感がある。

 また、これまでの人身事故や火災の多発や総会屋問題なども神鋼不信の下地をなしているのだが、神鋼は当然のごとく無視しようとするだろう。ここにも住民の感情との大きなへだたりがある。
[2006/07/29 09:08] 加古川・兵庫 | TB(0) | CM(0)