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湿った薪でもどんどん焚こう(ただし工夫して) 

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 暖かい兵庫県南部とはいえ、薪ストーブが活躍する一年でいちばん寒い時期になりました。

 しかし。

 LumberJacksなんていう薪割りグループをやっていながら今年は圧倒的に薪が足りません。

 原因はこれ。

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【写真説明】昨年5月の作業風景。これだけやったらこの冬は楽勝──のはずだった。

 じつはこの薪をぜんぶドロボウに盗まれました。だいたいふつうの家の2冬ぶんくらいは余裕で確保していたのですが、ぜんぶ消えた。

 地元の加古川市八幡町で地元の方から公園の木を伐採するよう依頼がありました。広い公園でしたので伐倒・玉切り・割り・積み上げ乾燥まで現地ですませてあとは冬に使うだけの状態にしておいてのですが、冬になってみたらぜんぶ消えていた。

 けしからん輩もいるもんです。この公園は入口にカギがかかるようになっているのですが、どうにかしてカギをコピーしたか、カギが空いている時間にそれとなく持ち出したか、一輪車などで持ち出したかのいずれかであることはまちがいありません。こんな重いものを大量によくも持ち出したものですが、およそ1人に換算してまるひと月くらいの労働を盗まれたわけで、ほんとうに気をつけなければいけません。

 甘く見てました。世の中とんでもないアホがいるもんです。

 てなわけで、今シーズンは薪の備蓄が手薄でして、自宅用の薪を切り崩して販売用にまわし、自宅用としては半乾きの濡れ丸太を切り刻んでは乾かしつつ焚いているような情けないありさまとなってしまいました。





 で、半乾きの薪は焚いてはいけないのかというと、薪ストーブの常識としては「焚いてはいけません。湿った薪は最悪です」ということになるのですが、そうも言っては居られません。ないものはないから焚くしかないのだ。

 というわけで、本日は湿った薪をどうやって焚くか、その経験的目安というのをご紹介しましょう。

 じつは、完全に乾燥した薪が大量になくてもどうにかして薪ストーブ生活はおくれるものなんですね。また、手に入る薪がベストコンディションであるとはかぎらないキャンプなどでも案外役に立ちますよ。





 湿った薪といっても、切ったばかりの薪をいきなり焚く人はいないと思います。さすがに完全にナマの木は燃えません。実際問題としては、割ってから3カ月─半年くらいしかたってないけど、これ燃やしちゃっていいんだろうか。そんな感じが多いでしょう。

 冬から春にかけての作業をさぼってしまい、作業が梅雨や夏ごろまでずれ込むというのがよくあるパターンです。だいたい薪ストーブ生活3─4年目くらいに慣れてきてこういう事態におちいることが多いようです。オレはそうでした。

 まずは使う順番です。

 もちろん薪割り作業した時期が早い薪から使っていくわけですが、中でも地面から離れた部分に積んである薪を使います。地面に近いところに積んである薪と風とおしのいい薪棚の上部に積んである薪とでは乾燥度合いがぜんぜんちがってきます。

 経験的には、日がよく当たる場所に積んである薪より、雨がまったく当たらず風通しがいい場所においてある薪のほうが乾燥が進みます。もちろんどちらも良好な場所が薪棚としてはベストですが、そういう場所はだいたい庭の一等地であって、薪の置き場なんてのはもうちょっと条件が悪い場所が多いものですよね。そういう場所では日当たりより風通しを重視してください。雑草がまわりに生えていない場所は湿気がたまらないのでなおさらよろしい。

 使う薪を選んだらいちど焚いてみましょう。焚きつけはよく乾いた細い薪を使って、温度を上げます。そこに半乾きの薪を投入してみる。たぶん、しばらくすると薪の断面から「シュー」といって水分が泡をともなって出てくると思います。この水分の噴出が5分ていどで消えるようならあまり問題ありません。温度が下がらないように高温を保って焚けばふつうに薪として使えます。

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【写真説明】乾燥の悪い薪を焚き始めると、こんなふうに水分・樹脂分が噴き出てくる。5分で収まるようなら許容範囲。

 5分をはるかにすぎて10分以上もシューシューいってるようなら、その薪はさすがにそのまま焚くのはよくありません。ストーブの温度が上がりにくくなってしまいますので一手間加えます。

 どうするかというと、ストーブのそばに積み上げて熱をかけてガンガン強制乾燥させてください。同じ面ばかりをあてないように、時々薪ホルダーの中で位置を変えながらまんべんなくあたためます。かなり近づけてもだいじょうぶです。ウチのストーブは輻射式(ストーブ本体がモロに熱くなる方式)のストーブですが、本体の20─30センチまで近づけて強引に乾燥させます。もちろん在宅時だけね。ヘンな臭いがしたらすぐに対応できる時だけです。あと、乾いた薪が動くことがありますので、荷くずれしてもストーブに接触しない工夫はしておいてください。

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【写真説明】こんなふうに乾燥させている。時々回してまんべんなくあたためるのがコツ。

 薪は温度が上がるとあちこちに割れが入り、さらに水分が抜けやすくなって薪がカリカリに乾燥してくるのが分かると思います。温度が上がっているとさらに火付きがよくなるので、こうしておいて順繰りに燃料として使っていくわけです。

 こうして強制乾燥させながらなんとか冬をしのぐことができると思います。

 気をつけてほしいのは、どうしてもこういった焚き方をすると煙突が詰まりやすいということです。薪ストーブでいちばん怖いのは煙突火災です。煙突の引きが悪くなってきたような気がしたら詰まってきています。すぐに煙突掃除をしてください。





 以上は未乾燥の薪を焚く方法ですが、さっさとあきらめて乾燥した材木を工務店や材木屋さんからいただいてくるのもいい方法です。建築廃材は完全に乾燥していますから、あっというまに高温になります。半乾きの薪と混ぜて焚けば多くの場合は問題なく冬を越せると思います。

 半乾きの薪を強制乾燥させる場合、大割りの薪をもう一手間必要ですが半分以下に割ってしまうのも手です。体積あたりの表面積が圧倒的に大きくなりますので、乾燥がぐっと早まります。

 薪ストーブも薪も、どっちみちアナログな道具です。完全に乾燥した薪を買って焚いている人は何も考えずにすんで便利かもしれませんが、いつまでたっても焚くのは上手にはなりません。つぶしが効かない。

 前年にちょっとサボってしまったら、あきらめましょう。残念ながら取り返しは付きません(笑)。あとはこれをチャンスと考えて、工夫して焚いて生活できればいいのです。湿った丸太がシーズン途中に手に入ったときなどにも役に立ちます。スキルアップの機会と考えて、まあなんとかかんとかしてしちゃおうじゃないですか。


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[2017/02/05 23:19] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪割り台はクスノキを絶賛推薦します 

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 ストーブに使う薪は何の木でもいいんですか?というのはたいへんよく聞かれる質問です。いや、分かっている。みんなほんとうは

「いやあ、やっぱりコナラやクヌギがいちばんです」

と言ってほしいのだ。

「火持ちがいいし里山の代表樹ですからねえ」

とかありきたりな蘊蓄(うんちく)のひとつも付け加えてやれば満足して「やっぱり!そうですよねぇ」と腑に落ちた顔をできるのだ。

 そう言ってほしいのは分かってんです。

 火持ちがいいし、香りがいいし、樹皮の質感が「いかにも薪」という感じだし、シイタケを植えることもできるし、カブトムシやクワガタが育つ。たしかにコナラやクヌギは万能選手的にいい木だと思いますよ。さすが日本人が長年選択してきただけのことはある。

 しかしアマノジャクなわたしはあえてそうは言わない。

「薪なんかなんでもいいんですよ」
「なんでも燃えます」
「わたしは川原の流木から始めました」
「スギやマツのほうが温度上昇が速くて好き」
「コナラやクヌギなんて重くてカミサンが運ばれへん」

と愛妻家にすら化けてこれらの木をくさす。いやいや嫌いじゃないんですよ。21世紀になって、なんでもかんでもコナラやクヌギや里山でもないでしょうに、と思うわけです。

 じっさい、現代日本人は一日中薪ストーブを焚く人はほとんどいないわけです。終日家で薪ストーブ焚いてるなんてどんな富裕階級やねん。理想と現実をわけていただきたい。起きたら25分で出勤、残業から帰ってきたらメシフロネルなくせに。

 つまい焚くのはたいてい朝と夜なわけです。そうすると、やたら火持ちがよくても困る。パッとつけてカーッと温度が上がって、サッと消える。そういう燃え方をしてくれるほうが生活に合ってる。するとスギとかマツのほうがずっといい。

 もちろん自宅が仕事場だったりすれば火持ちは重要かもしれません。でも根本的に知っておくべきは「ナラやクヌギがいちばん」ではなく「樹種は使いよう。適材適所」です。

 スギはとくに手に入れやすいし、すばらしい特徴として乾燥が圧倒的に速い。昨夏奈良県の東吉野村で真夏の7月に薪割りワークショップをやったのですが、そのときに作った薪は秋の入口からもう焚き物にしたけれど何も問題なかったそうです。それくらい乾燥が早い。スギの薪としての性能なんてあまり注目されませんが、3カ月で使えるというのは特筆すべき性質ですよ。



 そんなわけで薪の樹種にはとくだんの思い入れはなく、手に入る木の中で使えるものをうまく使う方針ですが、あまり注目されない薪割り台には明らかに向いている木があります。

 そう、みんな大嫌いなクスノキですね。

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【写真説明】クスノキは成長が速いので柵などの人工物を飲み込んじゃうことがよくある。

 まあほんとうに割れにくい。繊維が錯綜している(※)ので斧ではなかなかやっつけられないんですよ。成長が早いので、住宅街の周辺で手に入る丸太にもやたらでっかいのが多いうえ、水分が多いから運ぶのがたいへんな労力。そのくせ乾燥させたらスッカスカになる。すなわち火持ちが悪い。

 また、トラックならいいのですが、ワンボックスカーで切ったばかりの新鮮な丸太を運搬すると臭いがキツくて目が開けられないくらいになります。

 ですが割り台にするとかなり利点が多いのですよ。

 まず、割れないというのが薪としては最悪ですが、薪割り台にするなら大きな利点に変わります。薪を割っていると古い割り台がいっしょに割れちゃうことがあるんですが、すると斧が足元まで来たりして危ない。ところが、クスノキはそもそも組織が割れにくいうえ、防虫剤として使われる樟脳を採取するくらいですからなかなか腐ってこない。

 割り台はあるていど大きくないと使いにくいのですが、クスノキはデカいのが多いのでこの点も優秀です。

 小学校の校庭にばかでかい木が生えているのは、兵庫県だとだいたいクスノキですね。県樹だし。学校は子どもの健康のためにも木立や緑蔭をほしがるので、成長が早い木を植える。その点クスノキは数十年でとんでもない大木になります。加古川市だと神野小学校とか日岡小学校とかに巨大な木がありますね。神野小学校は立派な木がたくさんあったけど切っちゃったみたいでもったいない。

 ちなみに、約30年前にわたしが卒業した同市の陵北小学校は新設の小学校でした。早く木を育てたかったのでしょう、成長がめちゃくちゃ早いことで知られるユーカリをたくさん植えてました。これも今は御役御免になって切っちゃってます。

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【写真説明】薪割り台各種。こちらはカシ。ひたすら重いので動かすのがイヤになる。固いので手首にくる。

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【写真説明】センダン。成長が速いので大きな丸太がわりに手に入りやすく軽い。

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【写真説明】アベマキ(クヌギ)。ナラやクヌギはおいしい木なのですぐ虫や菌類のエサになって腐る。


 虫害や大気汚染、塩分にも強い。そんなことから住宅地や公園、街路樹、社寺林にもたくさん植えられていますから特大の丸太がけっこう街中でも手に入りやすい。

 寒冷地や内陸部には育ちにくいので手に入りませんが、大きくて乾燥すれば軽く、割れず腐らず長持ち。まさに割り台になるために生まれてきたような木なのです。

 そんなわけで、日本の関東以西の沿岸部に住んでる人は、割り台はぜひクスノキをご用命ください。



(※)意外にあっさり割れるものもあるので調べてみた。「生育条件により材質の変化が著しく、交差木理や玉杢が現れる場合がある」(『日本樹木誌1』、日本樹木誌編集委員会編、日本林業調査会)。やはりすべてが割れないものではないようだが、経験的にこの木は乾燥させると繊維が噛みついてさらに割れにくくなるように思う。





[2016/06/16 00:32] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

日本人のケチをなげいて薪が泣く 

 薪を積んでいると、木がいろんな音を出しているのに気がつくだろう。割ったばかりの木の乾燥が進んでいるうちは、

「ピシ」「ピシ」

という小さな音が薪棚のあちこちから聞こえてくる。

 夕方によく聞こえるような気がするが、夕方は気温が下がって湿度が上がる時間帯だから、逆に吸湿中の音なのかもしれない。

 薪を焚いていた冬のある日のこと。ストーブの横に置いた薪から

「コリコリコリコリ」

とさかんに音がする。動かすと音が止まってしまうので、顔を近づけて耳をそばだててみると、どうも積んである薪の1本から音が出ているようだ。選び出しておいて次の日に割ってみた。

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【写真説明】右に写っている細い丸太状の薪から音が出ていた。

 すると小さなカミキリムシの幼虫がたくさんでてきた。棲んでいた木がいきなり切られて乾かされてさぞかし困っていたことだろう。

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 もっと大きければ食べるのだが、こいつはニワトリのエサだ。



 このカミキリムシみたいに生木をエサにする虫、乾燥した木を食うなんだかよくわからない虫、薪の隙間にすむゴキブリやムカデやワラジムシ、ひなたぼっこの台にするカナヘビ、隠れ家や越冬場所につかうヤモリ、営巣するアシナガバチ、そしてそれらを食べにやってくる鳥たち。

 薪を割って生活するだけで庭はあきれるほど賑やかになる。化石燃料が使えない昔の日本人は全員そうして暮らしながら百姓までしていたわけで、ワラとかシノ竹とか棒杭とか石に人糞まで、住居まわりは材質の違う有機物・無機物にあふれていた。

 日の当たる薪棚は冬でもあたたかいし北風も届きにくい。こういう気温や湿度や風速の微少な違い(微気象という)を利用してたくさんの虫や動物が生きていた。

 いっぽうの山では木を切ったあとは数年間草原になり、ウサギやシカが増えて猛禽類や肉食獣の狩り場になった。

ムラ→田畑→草原→里山→奥山

というグラデーション・モザイク的な自然環境が作られていて、いろんな生物の生息環境を作っていて、

ムラ:百姓の家
田畑:百姓仕事の場
草原:茅場、狩猟の場
里山:狩猟採集と薪炭製造の場
奥山:林業の場

と人間にもいろんな職業と環境を作っていた。それが今は

住宅地→田畑→奥山

みたいに単純化されました。つまりは

住宅地:サラリーマンの家
田畑:儲からない百姓の場
奥山:放置林

バッファーゾーンがなくなり、山から出てきた動物はいきなり畑に入って作物を食い荒らすしかない。

 雨の音も聞こえない厚い断熱壁に包まれて空調を効かせて年中小春日和でくらす今の日本人は動物たちにとって
 
「なんてケツの穴の小せえケチな野郎だ」
 
と思われてることだろう。





[2016/06/15 01:37] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪割りとトヨタ生産方式 

 きょうは暑かったですね。30度超えですか。

 こうなってくるといよいよ薪割りの季節は終わった、という感が強いわけですが、今年は冬に丸太を使ったバイクレース会場の準備をしたりしていたので、いまだに薪がぜんぜん足りなくて泣いています。

 これから一生懸命割っても、今ごろの木は水分が多い。乾燥地の瀬戸内地方といえども、なんとか冬の中ごろには使えるようになるかなぁというわけで、困ったもんです。



 薪の製造を急がなければならないのですが、きょうはこういうときにこそ思い出してほしいノウハウをひとつ。

 「薪割り」と呼んでいますが、作業内容のほとんどは薪割りじゃないことをしているということに気づいてほしいのです。これを省けば圧倒的に作業効率が上がります。

 LumberJacksは薪割りなんてプリミティブな作業を「トヨタ生産方式」を参考にしてやっています。ほとんど趣味の世界なのに、ゴリゴリの物づくりノウハウを導入しているわけですね。

 わたしが薪割りワークショップで話している内容は、じつは実際の薪割りで培った内容だけではなく、書店のビジネス書コーナーにある「5S活動」「7つのムダ」とかそういうキーワードが入ったの現場系の本にならっていたりするわけです。



 トヨタ生産方式(トヨタ方式ともいう)の本は、だまされたとおもって、ホワイトカラー系の仕事しかしたことがない人はいちどご覧になったほうがいいですよ。いやほんと。絵がいっぱいの楽しい入門書とかありますから。

 トヨタ方式はジャストインタイム方式といって、必要な部品を必要な時に必要なだけ手に入れるために、工場の外に下請けのトラックを待たせたりとか、すなわち下請けイジメだとか、そんなことを教えられた記憶があるんです。社会科とかで。わたしもそんなイメージがあった。

 ぜんぜん違います。どんどん進化してます。いつの話やねんって感じだ。

 生産性を上げるためには人間の創造性を引き出さなくてはならない。下請けを叩いても創造性は引き出せない。そういう哲学的なところまで到達しちゃってます。こういうの知ると日本人ってほんとうにすごいなと思う。



 たとえば、トヨタ方式で薪割りを考えてみましょう。薪割りにほんとうに必要な本質は、丸太に斧が当たって割れる部分だけです。これ以外はぜんぶムダ。できるだけ削減するんですね。

 薪を運んだり、割り台に乗せたり、木くずを掃除したり、チェンソーを整備したり、そういういっさいをできるだけ減らす。改善改善また改善。

 わたしは薪割り作業をするときに「トラックは丸太の山にできるだけ近づけて停車させてください。1cmでも近くに」とか言うんですが、そういう意味なんですね。

 たとえば軽トラを雑に停車させて丸太の山から50cm遠くに停めちゃったとしますね。現場でありがちなことです。すると1つ20kgある丸太を動かす手間が1本で50cm増えるわけですから、100本積むとすでに5000cmつまり50m動かしているわけです。この50mの移動はまったくなんの価値も生まない完全なムダ作業です。時間がかかるし疲れるし。ロクなことがない。

 こういうムダを可能なかぎり削っていくわけ。

 この現場で発生するムダを「7つのムダ」とかに分類して考えられるようにしてある。トヨタはすごいんですよ。



「楽しみで薪割りをしてるのに、そんなことしたら仕事みたいじゃないか」

というような感想を抱くかたもいらっしゃるかもしれませんが、いや、たんに頭を使ったほうがラクで楽しいんですよ。短時間で効率よく仕事ができればラクしてたくさん薪が確保できますし、薪割り仲間とゆっくりコーヒーブレイクをする時間も取れるわけですし、年をとっても体力がなくなっても続けられる。

 というわけでトヨタ生産方式による薪割り、絶賛おすすめです。




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[2016/06/10 23:01] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪を割るのはあなたではなくあなたの身体です 

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【写真説明】特殊伐採が仕事の上中広幸君は「身体がいい人」の典型。身体のいい人というのは、たいてい自分のことをアホだと思っていて、いっしょにいて気分がいいのですぐわかる。

 くどいようですが、薪割りはすぐにできるようになります。さいしょは丸太の真ん中にあたらなくて困るかもしれませんが、すぐに体が覚えて3mmと狂わない場所に斧が入るようになる。

 都市文明におかされた現代日本人としては、こんな大きくて重くてどこで手に入れればいいのかわからないものを燃料として日常的に使えるようになるのかどうか、さいしょは自分で疑わしいわけです。わたしも最初はそうでした。

 でも、いい丸太は初心者でも驚くほど簡単に割れますし、すぐに丸太を見る目も養われて、ムダな労力を使わなくなります。ほんの1─2時間も夢中で割っていると薪が大きな山になっていることにすぐに気づく。

 このへんが快感なんですね。



 ところで、おかしいと思いませんか。

 なぜ頭上に振り上げた斧を3mmと違わずに丸太に当てることができるようになってしまうのか。頭で考えてやっているわけではなく、まさに身体が覚えるわけです。割るのは身体のほうであって、頭ではない。頭で考えていたら、こんな作業ができるわけがありません。階段の存在を意識したとたんに階段を踏み外してつまづくのによく似ています。

 合気道の内田樹先生は、稽古のさいちゅうによく箸で食べ物をつかむ話をされる。たとえばこんなふうだ。

 箸で豆をつまむことなど簡単です。煮豆はもちろん簡単ですが、それが節分の乾いた大豆であっても日本人にはたやすいことです。

 しかしよく考えてみると、箸は円柱どころか、やたらに細長い円錐形状をしている。しかも塗り箸であったり無垢の木だったり表面の仕上げはいろいろです。その円錐形状のツルツルした箸で、摩擦係数の少ない乾いた大豆をつまむ。大豆は基本的に楕円体ですが微妙な個体差があるので一様ではない。それでも大豆を次々につまんで口に入れることができる。

 いちいち考えてやっているわけではありません。目の前にいる子どもがちゃぶ台のへんなところにお茶碗を置いててひっくり返しそうだなと危ぶみつつ、左手では新聞をめくり、耳ではテレビのニュースを聴いて明日は雨かなどと軽くふさぎこみながら大豆をつまむなんてことが誰でもできる。

 つまり身体が勝手にやってるわけです。人間のやることというのは、じつは頭じゃなくて身体がほとんど勝手にやっている。

 逆に、だからクルマのブレーキがじょじょにシブくなってきていても慣れちゃってわからない。これは身体が自動的に調整しているからであって、すぐれた身体の機能なわけです。

 人間の身体というのはそれほど高度な能力を持っている。考えてばかりで動かない人というのは、本質的にトロい脳みそばかり使って、複雑な同時並列処理ができる身体が使い切れていないともいえます。

 アホな人は脳みそがアホなのではなく、身体がアホなのだ。

 中小企業大学校のゼミでお世話になった経営コンサルタントの林弘征先生は、論理立った明晰な思考が持ち味の先生なのだが、その林先生が

「経営なんて勘ですよ。理論はその確認のためにある」

とおっしゃったときは快哉を叫びたい思いがしました。



 昆虫なんか脳みそなんかほとんどありませんが、脳の単純小型版みたいな神経節が身体のあちこちにあってほとんど身体だけで生きているといってもいいもののようです。だからあんなに正確で速くて迷いがないのね。

 では、身体に比べて圧倒的に能力の低い頭の論理回路をどう使うか。

 端的に言って、身体を育てるために使うだけです。いい身体を作るための習慣を考えるわけ。

 運動不足がちな人はランニングの習慣が身につくようにスケジュールを工面したり、マラソン大会に応募してしまったりして「締切効果」を狙ったり、そういうふうに身体の性能を上げるために頭を使う。それが正しい頭の使い方だ。



 薪ストーブや薪割りも同じです。頭で考えていては、あんなに面倒な暖房装置や大きくて重くてどこにも売っていない燃料を使う気にはなれません。どう考えてもコストパフォーマンスが悪いわけ。薪割りなんかしている間にアルバイトして、その賃金で灯油を買った方がよっぽどトクなことは子どもでも分かることです。

 でも、そういう話じゃないんですよ。

 「薪ストーブのコストパフォーマンス」とか理屈っぽいことを考えているのは、たいして処理能力の高くないあなたの頭です。反対に、薪割り生活を習慣にしてしまって、べつに苦でもなくやっているのはあなたの身体のほうだ。

 頭はアホだから、圧倒的に能力の高い身体の能力というのが理解できません。

 そろそろ頭でものごとを考えすぎるのはやめたほうが人間は幸せになれるんじゃないですかね。そんなことをトロい頭で考えつつ、薪ストーブや薪割りをしつこくお薦めするわけですから、あなたは身体で判断してくださればいいわけです。




[2016/06/03 23:25] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪ストーブの導入は自己責任でお願いします 

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 薪割りをするには斧が必要です。日本の法律では、確たる目的なく刃物を持ち運んでいると銃刀法や軽犯罪法にふれますので、刃物を持っての移動はすべて自己責任でお願いします。

 振り回した斧は、かんたんに足の指を切り落とすくらいの力があります。作業時にはしっかりした靴をはき、使用中の負傷は自己責任でお願いします。

 薪割り生活に慣れてきたら木を切り倒してみましょう。こうなるとチェンソーを使います。しかし、チェンソーは地上にある道具のうちでもっとも危ないとすらいわれる道具です。強烈なパワーを2ストロークの小形エンジンで発生させ、むき出しのノコギリ刃を秒速20メートルで高速回転させます。木に当てる場所をまちがうと刃がはね飛ばされて自分のほうに向かってくる。なのにしろうとでもホームセンターで買えてしまうし、使い方を教えてくれる人は見つけにくい。ときどき山で1人ぼっちで農家の人が亡くなる悲惨な事故が起きています。じゅうじゅうご理解のうえ、使うときは自己責任でお願いします。

 薪ストーブを使い始めると、重量物を積んでクルマで走ることが増えます。軽トラに新鮮な丸太を積むと簡単に1トンを超えます。そのまま走ると重量オーバーの道路交通法違反ですが、まじめに350kgだけ積んでいると現場と自宅を往復する回数が増えてしまいます。このあたりの判断も自己責任でお願いします。

 薪ストーブを使ったことのない人は、火の消えても本体が長時間熱いことを知らずに触るかもしれません。お客様の来宅時にはとくに子どもに注意を促す必要があります。こういったヤケドなどの事故の対応については自己責任でお願いします。

 基本的に家の中の焚き火ですから、ストーブのドアをあけたとたんに火の粉がはぜて薪ストーブから飛び出してくることがけっこうあります。火災の原因になりかねません。燃えやすいものはストーブのまわりには置かないようにし、火災保険に入るなどの対応策は自己責任でお願いします。

 煙突は1年に1回は掃除することをおすすめします。すすやタールをため続けるとストーブがよく燃えなくなるばかりか、引火して煙道火災(煙突火事)を引き起こす原因になります。直接火がつかなくても、木など可燃物がストーブや煙突のそばにあると、長年の間に低温炭化という現象によってすこしずつ炭になり、ついには発火することがあります。煙突のメンテナンスは自己責任でお願いします。

 最近のストーブは性能がよくなりましたので高温で運転しているかぎり煙はそれほど出ないものですが、火をつけはじめる時や薪を足したときにはやはり煙が出ます。設置してから御近所から苦情をもらっても自己責任です。事前に近隣の了解を得ておきましょう。

 庭に薪を積んでいると、薪の間にアシナガバチやムカデなどの毒虫が住みつきます。ふいに薪を動かしてこうした毒虫を刺激し、刺される事故が後を絶ちません。なんどもハチに刺されるとアレルギーでショック死する可能性すらあります。ポイズンリムーバー(毒の吸い出し器具)を常備し、靴を履くときはかならず中にムカデがいないかチェックするなど習慣づけるなど安全確保は自己責任でおこないましょう。

 薪ストーブを導入するにはご家族の同意が必要です。とくに中年の男性がストーブをほしがる例が多く、そのばあいそろそろ夫に愛想をつかしはじめた奥様を説得する必要があります。じゅうぶん同意を得ないままストーブの導入を強行すると、大枚をはたいたあげくに家庭環境を破壊しかねません。説得工作は自己責任で。ほかのだれにも頼めません。

 このように、薪ストーブを生活に使うには最初から最後までたいへんな危険がともないます。しかもそもそもスイッチひとつで暖まれる道具ではありません。点火するのに手間がかかりますし、部屋がじゅうぶん暖まるのにもあるていど時間がかかります。それでも導入しようというなら、その一連の面倒ごとを乗り越えられるかどうか、すべて自己責任と考えられるかどうかをよく検討するべきでしょう。

 思えば、産んだ親は選べませんが、生まれてから後のことはすべてあなたの自己責任です。自分の人生には責任を持つ。薪ストーブは安全が過剰に確保された現代日本において、そんなことを考えさせてくれる稀有な道具になるのではないでしょうか。

 書いていてなぜか吐き気がしてきたが、責任者は出てこい。





[2016/06/02 23:59] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

軽トラの荷台にはゴールデンゾーンがある 

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【写真説明】ダイハツの「HIJET」と書いて「ハイゼット」。「じぇ」が発音できない高齢者への配慮が感じられる。



 田舎生活で活躍するのが軽トラです。農家は350kgの最大積載量など軽く無視。1トンくらい平気で乗せて走ります。設計する自動車メーカー各社も、それくらい乗せても破綻しないように作っているようです。

 薪や丸太もたくさん乗りますけど、フラフラするのでほどほどに。

 最近でこそようやく女性向けにカラフルな車体色や紫外線カットガラスを使ったのが出てきたりしていますが、どのメーカーの軽トラも基本的にスペックがほとんど同じ。スズキ・ダイハツ・ホンダと3社が作っているとは思えません。(ちなみにマツダや三菱、日産の軽トラはスズキとダイハツによるOEM)

 視界が広く小回りがきき燃費がいい。山間地の強烈な傾斜もなんのその。山のようなダイコンも竹林から切り出した竹の束も、時には土砂や砂利、長い刈り払い機も何でも運ぶ。日本の農山漁村風景に完璧に適応した、まさに日本特産の小昆虫のような日常の足。まさに自動車界における「便所サンダル」のような存在です。

 使い捨て文化の日本でほとんど唯一、買ったオーナーが最後までコテンパンに乗りつぶす確率が高いクルマが軽トラ。真の国民車です。英語で小文字の「japan」といえば漆器のことだが、そのうち軽トラの意味になってもおかしくない。

 わたしも人生最後のクルマはどうあがいてもけっきょく軽トラになりそうな気がしてなりません。



 ところで薪割り生活にも多用されるこの軽トラの荷台に、ゴールデンゾーンがあることはあまり知られていない。

 たいていの人は、買い物のあとのビニール袋とか、チェンソーとか、靴とか、そういう小さな荷物は運転席に近いキャビン(運転室)のすぐ後に置くでしょう。しかしそこは正しくない。

 ほんとうに置くべき場所は、荷台のいちばんうしろだ。

 軽トラは構造上エンジンが前よりに付いている(ホンダは真ん中寄り)ので、重量物は荷台の後ろのほうに置いたほうがバランスがいい。しかし、小さな荷物はひょいっと前のほうに置きがちだ。しかしここは断固としていちばん後ろに置いてほしいのです。

 なぜなら、ここがいちばんホコリが立たないから。

 キャビンのすぐ後ろに荷物を置くと前から回り込んだ風が荷台で渦を巻き、走っている間じゅうホコリにさらされ続ける。買い物も靴もほこりだらけ。

 とくに注意したいのがチェンソーなどの機械ものです。超高回転でエンジンを回し続けるというひじょうにシビアな道具なのでしょっちゅう掃除をするほうがいいのだけど、キャビンの直後におくとただでさえ油と木くずにまみれた道具なのに、さらに細かいホコリを呼んで掃除がたいへんになる。

 小さなコツだが、覚えておくといろんな場面でラクですよ。

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[2016/06/01 22:31] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪は水分を含んでるほうが火持ちがいい? 

 昨冬、薪作りの作業の途中で弁当屋に立ち寄った。

 わたしの軽トラックに積んだ薪を見て地元のじいさんたちが話している。軽トラに薪を積んでいるというのは、イナカモンのバッジを付けているみたいなもんなので、受け入れられやすく話ははずむ。

 しかしここで例の話がまた出てしまった。

「ストーブの薪はちょっと湿っとるくらいのほうが持ちがいい」
「そうやそうや」

と地元のじいさんたちは言ったのだった。実に多い。この手の誤解が。

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 はっきり言っておきます。水分含んでる薪はダメです。

 薪の火持ちをよくしたければ水に浸けますかあんた、という話。もしくは焚き火に霧吹きで水をかけながらゆっくり燃やしているようなもんです。

 それ、暖かいわけないからね。けむいだけ。

 クルマのガソリンタンクにちょっとなら大丈夫だからと燃費向上のために水を混ぜますか。

 それ、ちゃんと燃えてないからね。エンジン壊すよ。



 水を含んだ薪がゆっくりしか燃えないのを「火持ちがいい」と表現するのがまちがいです。正しく「たんに燃えてない」と表現しましょう。

 発生した熱を自分の乾燥のために使ってしまうので、熱量的に無意味です。さらに大量の煙を発生させて煙突がつまるのを早め、煙道内部を結露させてサビを早め、とまあロクなことはない。大ダメージです。

 それでもなんでもゆっくり燃やしたいという方はどうしたらいいか。

 火持ちは薪を大割にするとか、樹種を選ぶとか、節くれ立った固い部分を使うとか、もしくは煙突のダンパー(絞り)を調節して焚き方で解決すべきことであって、水分量でコントロールすべきことではありません。



 「薪ストーブ通」ぶった人にかぎってこういう大問題の知ったかぶりをよく吹聴する。めんどくさいからあまり指摘せずに放置してますが、これを読んだらそういう中途半端なノウハウを流布するのはやめましょう。

 あわれな初心者が誤解して、煙突火事になったらたいへんですから。





[2016/05/31 22:44] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪割りとニワトリは相性がいい 

 田舎暮らし・郊外生活をしている人に全力でお薦めしたいのがニワトリだ。養鶏というほどじゃなく楽しみで飼ってるペットだが、もちろんタマゴを生んでくれる。

 このニワトリ。薪割りをする人にはさらなる恩恵があるのだ。

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 3年間フィリピンに住んでいたので、街中でも田舎でも路地にはそこらじゅうにニワトリが歩いていたし、イヌやヤギなどの動物が、ヒトになるまえのガキどもとともにうじゃうじゃいる。なかなかいい光景だった。

「ああ、おまえらもそのへんに住んでていいよ」

って感じのゆるさ。今まで訪ねたいろんな外国を思い出すにつけても、日本の風景にはほんとうに動物がいない。イヌとネコだけ。しかもその管理のキツさ。

 フィリピンから帰ってきたら驚いた。イヌの散歩中のオバさんが地面に急にひざまづき、イヌの肛門に手を合わせて拝み始めたのである。目を疑ったがなんのことはない、イヌのフンをビニール袋に直接受けようとしているのであった。

 フィリピンでのテキトーなイヌの飼われ方に慣れていたので、あまりにおかしくて涙が出た。そのあと、哀しくなった。日本は3年の間になんだか急速に変なことになっているようであった。

 何百羽も飼うならいざ知らず、知人が飼っているのを見てもニワトリは簡単で楽しそうだった。しかしなぜかうちのカミさんがずっと反対であった。

 わからずやの壁を打ち破ったのは外圧だった。ある日ニワトリがいきなり放り込まれたのである。顛末はこうだ。

 時は2014年の年末である。わたしが株式会社ムサシの社長に就任したので、かつての経営者研修の仲間たちがお祝いに何かを贈ろうと画策した。あいつはキャンプとか好きだし、クリスマスも近い。丸ごとのニワトリを贈り物にしたらどうかという話になった。きっとローストチキンにして食うだろうと。いや待て。あいつはニワトリが生きていたほうがおもしろいんじゃないか。そうだそうだ、そうしよう──。

 そんなわけで年末のある夜、いきなり研修仲間が自宅に訪ねてきて、わたしは生きたニワトリを1羽贈られたわけだった。ニワトリが競合のアイリスオーヤマのケージに入っていたのが悔しい。

 カミさんは怒った。わたしは困った(ふりをして喜んでいた)。

 ニワトリは養鶏場からもらってきたとのことで、これはまた絶句するくらいハゲチョロケの貧相なニワトリである。胸と尻など地肌がまるきり露出していて正直いってかわいくもなければうまそうでもなかった。

 この寒いのに凍死するんじゃないか。かわいそうなので玄関に入れておいた。

 翌朝、20年ぶりに喘息を起こした。思い出した。わたしはもともと軽度の動物アレルギーなのだった。

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【写真説明】さいしょはこんなハゲチョロケの貧相なありさまだった。

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【写真説明】羽根はこんな感じでサヤに入った状態で生えてくる。はい、たいへん気持ち悪いです。



 そんなわけで飛び込んできたニワトリであったが「暑さには弱いけど寒さには強いよ」と南紀のツチヤマ君に聞いていたので、まあ大丈夫だろうと庭で飼いはじめた。

 ホームセンターでエサを買ってくる。おお、食べた。庭でおそるおそる放してみたら、べつだん逃げるわけでもないし、捕まえるのもかんたんだ。

 昔から飼いたいと思ってはいたものの、鳥小屋を建てるのがいやだった。たまった糞尿のにおいが汚ならしいので好きではないのだ。しばらく農業用のコンテナで伏せておくことにした。吹きさらしで寒そうなので落ち葉を敷いて板でかこってやる。翌朝になっても元気そうだ。この程度の寒さで死ぬわけではないらしい。

 おそらく養鶏場でケージで飼われていたのだろう。ツメが伸び放題だったので切ってやる。1丁7000円するスワダの最高級爪切りでツメを切ってもらうニワトリはなかなかいないだろう。ツメに邪魔されてねじれていた指がましになった。

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【写真説明】3カ月で美しく立派になった。見よこの肉球のたくましさ。



 鳥類というのは完全にほ乳類とは異質の動物なので庭で見ていて飽きない。

 「庭トリ」とはよくいったもので、半径20─30メートル以上遠くへは行かないし、夜暗くなるとちゃんと家に戻ってくる。賢いものである。

 だが賢く見えるのはそういう「人間が品種改良で定着させた便利な習性」の部分だけであって、大型の動物にしては知能は驚くほど低い。だいたい形態を見ても分かるとおり脳みそがどうみても小さすぎる。脳を発達させるかわりに飛翔性能と運動性能と視力を発達させたのが鳥類である。

 だから言うことはぜんぜん聞かない、というより学習能力がそもそもない。どんなバカイヌやアホネコでも「コラッ!」とか「シッシッ!」とかいって手を振って追い払えば困った顔ですごすごと去って行くわけだが、ニワトリというのは「コリャアア!!」と大声を上げてものすごいアクションで激怒を表現しても、まるっきりカエルのツラに水。目は点のまま首をヒョコヒョコ動かして険しくも涼しい顔をして一歩も動かない。宇宙人ってこんな感じではないか。そういえば鳩山由紀夫に似ている気もする。

 天気のいい日に庭で朝食を食べていると、足元にきて様子をうかがっている。手に持ったトーストを狙って飛びつくタイミングをうかがっているのだ。こちらは分かっているので「シッシッ」とかやるわけだが、まったく逃げていかない。実際に蹴飛ばしたり手で押しやったりしないと一歩も動かないという通じなさ。

 動物愛護のかけ声もかまびすしい21世紀なのに、体罰しか効かないというのはせつないものがある。

 見た目はふっくらとかわいいし、恒温動物だし、こちらとしてはイヌやネコの仲間に入れてやりたい。心の交流をしたいのである。だが、冷静に観察しているとオツムの程度はどうみてもカメやヒキガエルに近い。扱われ方には慣れるが、人に慣れているわけではないのだ。

「ニワトリは3歩歩いたら忘れるアホ」というのが定説だが、残念ながらこれを覆す事実は今のところまったく発見できない。3歩どころか、そもそもさいしょから何も通じている気がしない。
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【写真説明】ニワトリは子どもの遊び相手にちょうどいい。肉食恐竜にもそっくりだし。



 こうしてやってきたニワトリだったが、飼ってみるとなるほど簡単だしタマゴをポンポン生む。その後大学の同級生で養鶏家の市原君のところからも1羽をいただいて2羽態勢となった。

 その後、野生のアライグマに襲われたりしたものの、また広島県三原市の秦さんにゆずられたので、現在ふたたび2羽態勢となっている。

 タマゴを生まなくなったらつぶして食っちまおうと思っていたが、けっこういつまでも生み続けるのでタイミングが分からない。スーパーだといつでも売っている卵に旬があることも知った。盛夏と真冬にはあまり生まず、春と秋にやたら生むのである。なるほどね。

 飼っているうち、このニワトリが薪割り生活にもたいへん役に立つことがわかった。なんと、ニワトリを飼いはじめると、庭に積んだ材木を間接的に食うことができるのだ。

 じつは薪を人間の食料に変換する魔法の生き物なのである。

 ニワトリを庭に放しておくと、一日中地面をほじくりかえして虫やミミズを探して食っている。これは大変なごちそうらしく、わたしが庭で丸太仕事を始めるとニワトリがいそいそとやってきて、転がした丸太の跡にいるミミズなどを奪い合って食べている。

 丸太の隙間に潜んでいるゴキブリは大好き。ムカデでも固い甲虫でも食べるし、ナメクジも好きなようだ。木の下にアリの巣があれば、白いさなぎや幼虫を念入りに突ついて徹底的に食べる。形は似ていてもワラジムシは食べるがダンゴムシは食わない。

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【写真説明】薪の間によくいるゴキブリは大好物。
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【写真説明】越冬中のアシナガバチも薪棚からよく出てくる。たんに殺すよりニワトリに食わせればエサ資源になり、タマゴになる。黄身がタイガース模様になったりはしない。
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【写真説明】庭のどこに行けば虫が多いかをよく覚えている。ダンゴムシはまずいのか無視。
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【写真説明】庭木のドングリも割ってやれば冬場のごちそうになる。

 こうした虫やミミズは積んでおいた丸太や木の皮、落ち葉から発生したものだ。小さな庭の生態系で、木材の分解サイクルで発生した昆虫などの小動物をニワトリが奪い取ってタマゴに変換するわけである。

 これは発見だった。わたしは靴が汚れようが雑草がはびころうが、地面をできるだけコンクリートで埋めない方針でやってきた。生物相を全滅させてしまうからだ。この方針が生きるときがきた。ヒトが利用できないような小さな動物を鶏に集めさせてタマゴにするわけだ。

 これだけでもすばらしい効用だが、さらには庭に積もった落ち葉や木くずをずっと足で蹴り上げてかき回すので、庭が乾土化して手入れがらくになる。薪割り生活をしているとどうしても庭に木くずが溜まるのだが、これが厚い層になり、雨を含むとなかなか乾かず庭が一面腐葉土みたいになってくる。湿度が上がって不快だし、草がはびこるため蚊も呼ぶ。

 ニワトリがしじゅうかき回してくれるおかげで庭の木くずは晴天が2─3日も続けばすぐに集めて焚けるようになった。
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【写真説明】薪割りや丸太仕事を始めるとニワトリがいそいそと寄ってくる。ちょっと仕事のジャマではある。



 さらに除草にかんしてもニワトリは卓効を示した。

 とくに春先に顕著なのだが、庭の地面に青草が小さな芽を出すと、ニワトリは率先して軟らかい芽を食う。本人たちにとってはたんに軟らかくてうまい若芽を選択的に食っているにすぎないのだろう。しかし草にとっては「常に出鼻をくじかれ続ける」という状態になってなかなか伸びることができない。ニワトリ自身は食べれば食べるほど、次に出てくる若芽を食べ続けられるのでますます頑張る。

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【写真説明】春先から徹底的に食われつづけて伸びることができないかわいそうな雑草。ザマミロ。

 この自然にはじまった除草にくわえ、生来のズボラがさいわいして農業用コンテナでずっと飼いつづけていたのが、「チキントラクター」のテストにもなった。

 チキントラクターというのは、底の抜けたカゴにニワトリを伏せたまま飼育し(1)雑草を食わせて(2)地面を耕させ(3)フンは肥料として使う──というよくできたニワトリの活用法だ。

 じっさいに草で充満した庭の一角で農業用コンテナにニワトリを伏せたまま2─3日放置してみたらすさまじい結果になった。毒を含んだツルギキョウ以外、草1本なくなってしまったのである。

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【写真説明】こうしてコンテナを伏せて2─3日ほったらかしにしておく。小旅行に出るときなどがいい。
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【写真説明】帰ってくるとこうなっている。草の地上部だけではなく根までマジメに掘り返すところがすばらしい。

 ニワトリの数が増えた今年の春はさらに圧倒的に庭の除草がラクになっている。

 このように薪割りはニワトリとひじょうに相性がいい。庭をできるだけ生物相が豊かな状態に保つことを念頭においてきたのだが、ニワトリの導入でそれが一気に花開いた感じすらしているのである。







[2016/05/26 03:26] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)

薪棚コレクション 

 きょうは写真集をお送りしよう。いままでに出会ったいろんな薪棚の写真を集めてみた。参考になれば。


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【写真説明】薪ストーブを使い始めたころの一幕。薪は乾燥途中で収縮する。積んだ薪が崩れてくるほどとは思いもせず、御近所に朝から迷惑をかけてしまった。兵庫県加古川市。

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【写真説明】棚を建設しないで薪棚を立てるにはいくつかコツがある。少しだけ内側に傾くように積んでいくのもそのひとつ。鳥取県米子市。

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【写真説明】こちらはちょっとめずらしい薪棚。じつは鰹節の燻製のための薪だ。鹿児島県指宿市。

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【写真説明】LumberJacksのメンバーで特殊伐採(特伐)を専門にする林業会社を経営している上中君は几帳面だ。性格が薪棚にも出る。素直なヒノキ(かな)とはいえこんな直線の出た薪棚はなかなか見ない。和歌山県紀美野町。

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【写真説明】せどやま再生事業という薪の生産・販売活動をやっている太田川森林組合を訪ねる。木の扱いになれているのが薪棚からもうかがえる。広島県北広島町。

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【写真説明】薪の配達風景。喜んでもらえるようできるだけ美しく積んでおく。笑顔や驚きが生まれるように。鳥取県伯耆町。

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【写真説明】韓国の山村風景。日本とちがって乾燥しているからか野積みが多く、オンドル用なのでサイズは長いものが多い。韓国慶尚南道。

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【写真説明】韓国の田舎町で路地に積んであった大割りの丸太。日本ではここまで大きな割りの薪はなかなか見ない。大きくてもしっかり乾燥させれば長持ちする。寒冷地ならでは。韓国慶尚南道。

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【写真説明】LumberJacksきっての篤農家・秦さん宅に薪の配達に訪ねた。下がデコボコでも薪もデコボコなのでなんとかなる。広島県三原市。

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【写真説明】2015年営業をスタートしたオフィスキャンプ東吉野。夏だったが山間地なので涼しいだろうと薪割りワークショップをやった。案の定、午後からは川での水泳になってしまった。奈良県東吉野村。

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【写真説明】オリジナル薪ストーブを作っているイエルカ・ワインさん宅を訪ねた。「こんなところに人が住んでるの?」と疑い始めたころに現れた美しい家だった。長野県中川村。

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【写真説明】積んだ薪は写真のバックグラウンドとしても絵になる。規則性と不規則性のバランスがいいのだろう。兵庫県加古川市。

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【写真説明】自宅で使う薪の扱いなどこんなていど。日本きっての乾燥地だから屋根も不要。冬までに乾けばいいのだ。兵庫県加古川市。

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【写真説明】慣れた男3人がかりでやれば、1日でこれくらいは軽く割ってしまう。丸太がいいと作業もはかどる。木を倒してその場で丸太にし、その場で割ってその場で積んで乾燥させると手間が激減する。兵庫県加古川市。

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【写真説明】棚いっぱいに叩き込むほど薪を詰め込んでも、乾燥が進むとこんなに上部に隙間が空いてくる。だいたい5%ほど収縮するとみてまちがいない。兵庫県加古川市。

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【写真説明】棚に入れる薪を丸物ばかりにすると、また風景が変わる。薪の色合いや形状の違いを利用して絵を描く人もいるほどだ。兵庫県加古川市。

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【写真説明】ボコボコしたコナラやクヌギでもいい丸太を割ってきっちり積めばこんなに美しい立方体にできる。四隅をまず井桁で組みその間に丸太を詰め込んでいく。とにかく隙間なく。兵庫県丹波市。

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【写真説明】2014年、東京の青山で初めてやってみた薪割りワークショップは、とんでもない大雪に見舞われて笑えるくらいの大空振りに終わった。カッコつけるくらいしかすることがない。東京都渋谷区。



[2016/05/24 23:04] 薪割りノウハウ | トラックバック(-) | コメント(-)



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