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もう春だというのにストーブがやってきた。あこがれの薪ストーブである。 薪ストーブ。 この甘美な響き。薪を室内で直接燃やすという、どこか先祖返り的な家の重鎮たる暖房器具である。ついにこれを手に入れた。 かかった費用は7100円。71万円の間違いではなく。ただしくは7113円である。そういう薪ストーブがあるのですよ。その名も、時計型ストーブという。 上から見ると振り子式壁掛け時計のような形をしているので、その名がついた。ブリキもしくはステンレスでできていて、薪ストーブとしては破格の値段で手に入るのだ。よく知られたホンマ製作所のWebサイトを見れば信じてもらえるでしょう。ブリキより耐久性のあるAS60というステンレス機を処分価格で売っているサイトから7100円(送料込み)で買った。 本体より煙突+煙突工事費の方がずっと高いのであるが、部屋にもともとあった換気扇の取り付け穴を流用したので壁をぶち抜く必要もなかった。というようなわけで、本体・工事費すべて含めて5万円くらいで薪ストーブ生活が始められたのだ。 こまかい紙ゴミなんかこれでいっさいおさらばである。タバコの吸い殻なんかもどんどん放り込んで燃料にしてしまえばいい。今夜は暖かいのでそれも燃やさずにすんでいる。薪を多めに放り込むととんでもない熱量を発して部屋の温度を一気に25度くらいまで持っていく能力がある。本体が薄い鉄板なので真っ赤になるのが恐ろしくもあるが、先日まで電気ストーブ1台と湯たんぽしかなく室温5度に震えていたのが一気に快適になった。 薪ストーブのネックは燃料の確保だけれど、これはイヌの散歩を兼ねて近所の日岡山まで歩き、倒木のあまり腐っていないのを持って帰ったり、建築廃材を調達してきたりして当座を確保している。ほんとうは次の冬のための燃料を調達すべき時期なんだけれど、まあとりあえずである。 今のご時世倒木なんかわざわざ喜んで持って帰る人はいないから、競争率はゼロに近い。薪の調達が難しいから薪ストーブの導入を悩んでいる方、ちょっとした山なんか身の回りにないですか?ほんとうにないですか?神社や寺のそばにはありませんか。林床がきれいになれば神社やお寺も喜ぶはずですよ。 あとは川原。ここは流木の宝庫。台風や大雨の後はチェック。ひんぱんに川を見ていれば、どの場所に流木が集まりやすいか分かるようになる。川のカーブしたところや流れのよどんでいるところが狙い目。ここを出水の後に狙い撃ちすると、労せずして大量の木材が手に入る。 流木の質を見ればどんな木が上流に生えているか分かったりします。四万十川では大洪水を橋から見下ろしていると、家が何軒も立つような量の丸太がほんの短時間でずんどこずんどこ流れ去っていくのがたいへんな壮観でしたが、加古川本流はあまり針葉樹が流れてこないですね。でも針葉樹じゃないほうがいいです、薪ストーブの燃料は。針葉樹は勢いよく燃えますが、ほんとうに火もちが悪い。広葉樹を重点的に集めるようにしましょう。 大量の樹木を切るところとしては街路樹を伐採する現場などがあります。自治体に問い合わせれば分かるでしょう。どっちみち廃棄されているでしょうから、理由をいえば快くわけてくれるのではないでしょうか(イチョウの木は要注意。絶望的に燃えません)。 調達で案外問題になるのは運搬方法。軽トラがあればいちばんいいのですが、本当は。先日車を購入する話を書きましたが、まだないので誰かリヤカーを譲ってくれる人はいないか探しているしだい。これだとバイクの後ろにくくり付けて大量のものを運搬できる。そういう使い方も見越しておっさんバイクのホンダCD「ベンリィ」125ccを所有しているのである。リヤカーって新品で買うととても高いんですよ。6─7万円もします。オンボロの軽トラなら10万円くらいであるのに……。 とまれ、近ごろは山の木なんかを燃料として使う人はいないので、木材の調達というのはちょっと工夫すればラクなのではないかと思う。韓国などに行くと集落近くの林は燃料になりそうなものがいっさいないといっていいほどしっかり利用されている。かの地ではオンドルがあるからね。燃料としての薪炭や柴(死語に近いですねこれ)にまだまだ需要があって林がしっかり使われ、おかげで里山は日本よりずっと里山らしい風景をたもっている。 これに比べれば「薪集めがたいへんで……」というのは、工夫しだいといったところだと思う。あとは人脈ですね。軽トラを貸してくれたり、廃材の出そうなところを教えてくれたり。そういう人脈。こんな時に田舎住まいの魅力が出てきます。 さて来冬に備えて大量の薪をどう確保するか、急がないとこれから初夏にかけて樹木が大量の水分を含む季節に入ってしまう。忙しい忙しい。
くまがいさんがいきなりテンピュールのアイマスクを買ったみたいですね。光が気になって眠れない人にはほんとうにおすすめですよ。漫画家など生活が不規則な人にはとくに(笑)。昼寝にも最適です。オフィス仕事をしている人も、昼休みに20分くらい眠るといきなりラクになるはずです。そんなときにもアイマスクは役に立ちます。あとは飛行機の機内でも。 私はまつげが長いので、アイマスクをして寝ると目が銭形警部みたいになります。どうでもいいけど。 ひさびさに道具について。ジッポライターを新しく買いました。 スモーカーであってアウトドアズ・マンであって、たき火がほぼ人生の一部であって伴侶あるから、しぜん点火具が好きだ。高級ライター以外はいろいろ試したが、けっきょく落ち着くのはジッポライターだった。 ジッポはもう言うまでもないけれど、戦場でその性能が認められてきただけあっていつでも、どこでも、即座に火が点く。点いたら消えない。とにかく風に強い。若い時から使ってきたのでライターとはこういうものだと思ってきたが、ほかのライターを使ってみたら風に弱くて閉口し、結局いつもジッポに戻ってくる。アウトドア無敵のライターといえば、いまでもジッポにとどめを刺すのである。 100円ライターは便利だがとにかく風に弱すぎる。いくら手で覆っても少し強い風があるとなかなか点火しない。ジャケットの襟を立てて懐で点けてみたりしゃがみ込んで風に背を向けてみたりしても、なかなか。ジッポならびっくりするような強風の中でも火がついたまま消えないのに、と思いながらとにかくシュボシュボしつづけるしかない。 ジッポの利点は火を付けたまま立てておける点にもある。テント内での簡易照明やちょっとした加工用のコンロとしても使える。テントの中で物を探すのに使ったり、ナイロンロープの端をあぶって溶かし、ほつれ止めをしたりする。水の中に落としてもフタがあるのでビショ濡れにはならず、乾きやすい。 専用のオイルを使わなくても自動車のガソリンでも燃料に使えるのは案外知らない人も多い。けっこうなススが出て臭いがきついが、こういう非常時に強いのは辺境やアラスカなど原野や人があまりいず、使えるものはなんでも使わないといけないところ行ったりするとだいじです。 とはいえジッポにも欠点がいくつかある。1つに、オイルをよく食うこと。2つに、重いことである。 オイルといってもガソリンに近い粘度が低いもので、スモーカーの私だとだいたい1─2週間に1回はオイルを入れる必要がある。このためちょっと長旅になるとライターとともにオイル缶を携行する。ちかごろはコンビニエンスストアでもどこの店も売るようになったのでひじょうに便利になった。 このオイルはけっこうな勢いで蒸発してしまう。南紀の炭焼き人・土山徹君も一時炭窯に点火するのにこのライターを使っていたが、ノン・スモーカーの彼の場合10日に1回窯に点火するときしか使用しない。1年に36回。すると補充した燃料が次回の点火時にはもうほとんど雲散霧消しているというわけで、しぜんと使わなくなったらしい。ジッポはひんぱんにライターを使う、やはりスモーカーのための道具なのである。 ジッポは頑丈に作ってあるだけあってポケットに入れていると重いものだ。たんに重いだけならまだしも、重量の必然的既決として、万有引力の法則に従いやすい。つまり引力によって地球と愛し合う傾向がある。分かりやすく言うとよく落っことす。 ジッポは金属的存在感、機械的な感触が男好きのするモチーフである。金属面を利用していろんな意匠・デザインをこらしたものが発売されているのでコレクションするのも楽しいものだ。お気に入りは身に付けていたいのだが、持って歩いているとテキメンに紛失の憂き目にあうことになる。 フィリピン時代がひどかった。これぞ!と思ったジッポをひと月に2、3個なくしたことがあって、ショックのあまりライターへの思い入れをこれを機に捨てた。記者生活はタクシーに乗る機会が多く、重さのあるこのライターは車の座席に深く腰かけているとすぐにポケットから滑り落ちるのである。 以来いつでも買い替えがきくように、それでもちょっとは気の利いたものとして、総真鍮製(よく出回っているメッキのものと総真鍮製のものとがある。総真鍮製だと管楽器と同じで「ピン」とふたを開ける時に音がいい……ような気がする)のスタンダードなものを選ぶようにして、大事にするのをやめた。ポケットの中でカギ束も小銭もいっしょにしてある。傷がついても知らん顔である。いつでも出て行け、というくらいの使い方をすることにした。 ──すると、うまくいかないもので、以来まったく失うことがなくなり、今の「伴侶」はすでに5年くらい一緒である。こうなると「いつでも出て行ていっていい」と告げていた居候とはからずも5年付き合っていることになり、困ったことにまたふたたび情が移ってきた。こんなはずじゃなかった。というわけで新しいのを買い足すことにしたわけである。同じ総真鍮製で「SOLID BRASS」の刻印のないものがあるようなので、ネットで注文する。買うものが決まっていれば、ネットでものを買えるのは本当に便利になりました。昔ならあちこちの店を回るしか方法がなかったのにね。 ご存知かどうか、ジッポは永年保証がついていて、壊れたらいつでもタダで直してくれるというのが太っ腹である。勝手に送り付ければ直って返ってくるのである。車に踏んづけられても修理(というか、交換)してくれる。 実際には製造したライターの相当数が寿命をまっとうすることなく紛失され、都会や田舎のもくずになっているからこそ、こんなサービスができるんだろう。開高健のエッセイを読むと、ジッポはなくした人はたくさんいるが、拾った人の話はほとんど聞かないと書いている。私もやっぱりジッポにかんしては明らかに「出超」である。 とにかく、ふつうに使っている分には、フリント(火打石)とウイック(芯)をごくたまに交換していればまず壊れることがない。ヘビーユーザーにはジッポ以上のものは現在ないだろうと思う。 ジッポのことばかり書いてきたが、かたやマッチというのも便利なものだ。とにかく軽くて持ち運びに気にならず、煙草に点火した時の香りが煙草の味を増幅してくれる。振り消したときにマッチから立ち上る煙も美しい。 しかも風に強い、マッチは。アウトドアでは100円ライターよりよっぽど優秀だ。すぐに消えてしまうとはいえ、薬のついている部分は風にも容易には消えないから、煙草やコンロへの点火は申し分ない。欠点は水に弱いくらいなのだからマッチというのはもっと使われてもいいのに、なぜか実力以下の扱いしか受けていない。荒物屋やホームセンターで10箱まとめ買いするか、大箱を買っても申しわけないくらいの安値である。これを家のあちこちにバラまいておくと便利である。 プラスチックの100円ライターがいちばん使いツブシがきかず、また「持ち心地」もよくないということだ。火打石も使い切らずに捨てるしかないし、本体もかならずゴミになる。アウトドアでは火がキャンプの求心力だから、点火のような大事な儀式に100円ライターを使うのは気分的にもすぐれない。 子どものころ、100円ライターをコンクリートの壁に投げつけて爆発させて遊んだ思い出がある。 昨年前述の土山君のところに行った折り、縄文式火起こしを初めて体験させてもらった。木製の竿にピンと張ったヒモを回転ギリに巻き付けてひたすら板の上で回転させるという方式だったのだが、失敗の連続で、大人が2人がかりで大汗をかいて20─30分かかった。点火道具なしで火を点けるというののあまりの大変さに驚愕した。そりゃあ地上で局地的に温度を800度以上にあげなければならないんだから。縄文人は偉いなあ。いや、こんな面倒なことほんとに毎回やってたのか──などと炭窯の前でカンカンガクガク話す。たぶん火付け達人みたいのが出て、大いに尊敬を受けたりしたことだろう。 火は求心力なんだから、ちょっとはいいものを使いたいもんです。 キャンプでもタバコでも色気がないと。
フェル地下なんていうものがあるんですね。この 「フェル地下復活活動」には笑わされました。結局フェル地下の販売は再開されたようでなによりです。 カワウソの調査ではもっぱら釣り用のウェーダー(バカ長)が主ですね。韓国のフィールドに行くのも見渡しがきき川に人の少ない冬期ですので、ウェーダーの中にはきっちりズボンを履いて保温します。夏にカワウソ調査をするのならフェル地下がよさそうですね。 ──と、今思いついたのですが、このフェル地下は川遊びのかなり強力なパートナーになるんではないでしょうか。 最近の私の夏の川遊びは、澄み渡った夏の川で瀬に泳ぎ入り、上流から泳ぎ下りながらアユをズバリとヤスで突きとめるというものです。アユの数が多くないとかなり歩留まりの悪い漁ですが、スポーツ的な要素が強くて最近はまっています。 この時に使うのが川タビといって靴下の底がフェルト底になっているものなのです。もしくは川遊び専用に自作したスリッパ。鼻緒が強い便所スリッパの底にバカ長用のフェルト底をボンドで貼りつけています。川底でのグリップはいいのですが、いかんせん思いのが難点です。川の中を3次元的に動き回るので、岩や底を強く蹴るし、どちらかというと本職の道具ではなくオモチャに近いこれらの道具では満足していませんでした。 川タビはハゼがない靴下型なのでちょっと締まりが悪いのですが、そこがこのフェル地下なら、そうとう足のホールドがしっかりしていそうだし、沢登り用だから頑丈そうでもあります 次のシーズンにはこれを川で使ってみます。ご紹介ありがとうございます。このフェル地下、北海道の 秀岳荘(http://www.shugakuso.co.jp/「オリジナル品」をクリック)なんかで独自生産していないで、内地で川遊び用としてどんどん販売したらけっして今後も販売中止にはならないとおもいますよ。四国に行くとどこの雑貨屋でも川タビは売ってますし、どこの家にも備えてありますからね。それよりいい商品があるとなれば導入してくれるんではないでしょうか。 ちょっと筆が滑りました。すべては川での性能が証明されてからですね。来年の夏を待ちましょう。 ほかにも何か面白い道具を使っている方がいらっしゃったら、どなたでもぜひコメントをおねがいしますよ。
MULTI 8についてコメントありがとうございます。 掃除すべき部分までご教示くださり、たすかります。欠点がわかって使うのとわからないで持っていって現地で問題が発生するのとではまったく違ってきますので。 ところで10年というのは、1本を10年も使っているのですか?ずいぶんハードに使っているご様子なのに、よくなくしたり折ったりしませんねえ……。わたしはカワウソの調査で水没させたり、カヌー旅行でも朝晩露に濡れたりしょっちゅうなので、どれくらい持つでしょうか。 しかしぺんてるのHP、よくこんなところにある商品紹介を見つけられましたねえ。ひょっとしてだいぶ探してくださったんでしょうか。 他にもフィールド道具の必殺技があったらぜひおしえてください。
( 前回からつづく→)そして届いたぺんてるの MULTI 8(マルチエイトhttp://bundoki.com/?pid=1130084)、これはかなりおすすめできるペンです。 総プラスチックでできているにもかかわらず本体に安っぽさがなく、8本の色エンピツを繰りだす機構もカッチリ作られていて心地よいメカニカルに動作します。芯を出したまま芯選択具を兼ねているクリップを回すと、ちゃんとロックがかかって空回りをするところなど、気が利いています。芯が脱落することもありません。 本体の配色もシックで状況を選ばずに使えます。スーツの内側から出してもあまり違和感がありません。ちょっと心配なのは、クリップ部分のプラスチックが軟らかめの材質のため、粘りが確保されているかどうかという点ですね。よく折れるんだここが。しかしこれは通常の使用ではほとんど問題にはならないでしょう。 デフォルトでは8色の色エンピツ芯が入っているのですが、黒・赤・青のボールペン芯を入れることも可能です。この芯も細字ながらなかなか滑りのいいのが入っています。色エンピツ芯は12色、ボールペン芯3色、蛍光ペン2色、ノンコピー芯2種が発売されています。通常のHB芯も含めるとじつに20種から選べることになります。 惜しむらくはボールペンのインクが3色しか発売されていないこと。緑が発売されていれば4色ボールペン、もし8色発売されていれば夢の8色ボールペンが完成するのですが、現状では3色ボールペン+5色色鉛筆として使うしかないようです。ぺんてる開発陣の奮起に待ちましょう。 これはほんとうにいいペンです。2000円ではじつに安い。値段設定をまちがってるんじゃないかと思うくらいです。次回の屋外調査にはぜひ持っていって荒っぽい使い方をし、実力のほどを試してきます。 「分度器ドットコム」になんの利益関係もないのにこうしてアドレスを紹介しているのは、ぺんてるのウェブサイトでどうしてもこのMULTI 8が見つからないからなのです。そこがもう1点、残念というかもったいないところでありました。
eringoさんからコメントがあり、eringoさんの知人はぺんてるの MULTI 8(http://bundoki.com/?pid=1130084)という製品を気に入って使っているとのことだった。 ウェブサイトでさっそく探して、おおっ、これは、というのでいきなりクリックして買ってしまった。 というのは、フィールドで使える多色ペンをけっこう長年探しているのだが、なかなか見つからないのだ。こうしてようやくフィールドの話になりましたね、ペンの話が。 カワウソのフィールド調査をやりはじめて分かったが、多色ボールペンはこういう活動のときに本当に役に立つ。足跡のあったところには赤、フンは青、とか、鮮度の高いフンは赤、古いものは緑、その他の記述は黒、などどうにでも使える。 しかしいかんせん日本製の多色ボールペンは安ッチイのが多すぎる。色も重さも軽薄で、すぐにクリップが折れるし、どっちみち長く使えるものではなくたいていインクを使い切らずにバネがいかれてしまう。 そんな中「いいのを見つけた」と知人が教えてくれたのは ラミー2000(http://flugtag.jp/catalog/catalog_pen/bolejoint/02_0003_4.html)という製品。文房具屋で見ると、なかなか重厚でヨーロッパらしくしっかりしたペンだ。4色のペン先の選択方式も変わっていて、それぞれの色のボタンをノックするのではなく、ペンのお尻のほうについている4色の目印のうち、出したい色を上にしてノックするとその色がでるという凝ったしかけになっている。 しかし、いかんせん1万円もする。ちょっと重厚すぎて手が出ない。 で、あきらめかけていたのだが、そこへ飛び込んできたのがこのmulti 8だった。これは色鉛筆の多色芯ホルダー(8色)で、この芯をボールペン(黒・赤・青)にも変更できる。これがフィールドで使えるようなものなのかどうか、届くのを楽しみに待っている。また報告しましょう。(ア)
三菱鉛筆が発売した パワータンク(http://www.mpuni.co.jp/product/category/ball_pen/power_tunk_knock/index.html)はインクを改善しただけでなく、3000ヘクトパスカル(=3気圧)の圧縮空気でインクを中から押しだす機構を取り入れた。書き味がこれまでのボールペンと比較して圧倒的に滑らかになった。 なによりすごかったのは、ペン先を横にしても上にしてもインクが切れないことだ。仰向けで本に書き込みをしようが、壁に押し付けたノートに書こうが、まったく関係なく書ける。無重力でも書けるスペースペンというのは昔からあり、銀色に光っていて「いかにも」という感じだったのが、三菱のせいでたった210円になってしまった。 このパワータンクは、よく寝そべって本を読みながら書き込みをする私にはほんとうに役に立った。もうひとつ役立ったことがあって、それが長期入院中の知人の見舞いに持って行ったときであった。古くから行きつけのうどん屋の店主であったが、重病に冒されて寝たきりの生活に陥った。寝たまま書きつけができるペンは重宝してもらえたとおもう。亡くなるまでのしばしの間ではあったが。 このペンのすごいのは水と低温にも強いところだ。水に濡れた紙にでも書くことができるうえ、インクに圧力をかけて押しだす方式だからだろう、氷点下でも大丈夫だという。アウトドアに持ち出しても強いというのがこのパワータンクのふれこみである。実際、冬になると油性ボールペンのインクは固くなって書き心地がたいへん悪くなる。 このパワータンクを去年から使ってきた。書き味は数千円くらいのヘタな万年筆よりはよくなってしまったのではなかろうか。 と思っていたら、さらに上手が出た。 それが ジェットストリーム(http://www.mpuni.co.jp/product/category/ball_pen/jetstream/index.html)だった。新油性というインクを採用(どういうインクなのかは分からないが……)し、圧をかけてあるわけではないのに、おそろしくよく書ける。とくに太字の1.0はすごい。従来のボールペンの半分くらいの力で書けるようだ。よく書ける万年筆を思い出させる。まさにあのヌラヌラ感にちかい。「ちょっと滑りすぎじゃないか」と思うことすらあるのだ。 もう圧巻としかいいようがない書き味だ。しかも速乾性が高い。滑らかなインクだからやわらかくて乾きにくいのかと思いきや、あっという間に乾く。これを使いだしてから、手元に見当たらないとオタオタするようになってしまった。現在7─8本を買い込んで家やカバンのあちこちにバラまいてある。だまされたと思って使ってみてください。 これらの日本のボールペンがいちばん高いパワータンクでも1本210円という廉価で実現されていることに驚く。ジェットストリームは157円……。そんなんでいいのか? 日本製ペンのネックはやはりデザインだ。日本のボールペンは軸にラバーグリップが付いているのが当たり前になってしまい、機能一辺倒の面白みのない商品がじつに多い。いかにも事務用品然とした商品ばかりだ。書き味はすばらしいのに、じつにもったいないと思う。文具メーカはデザイナーにヨーロッパ人を雇い、シンプルに作らせて日本製のペン先と合わせて製品にしたらどうか。 下が三菱ジェットストリーム(157円)、上がルイジ・コラーニがデザインしたペリカン「No.1」(1000円)。No.1は質感、デザインともに秀逸だが、か、書きにくい……
ドイツやイタリアのペンを筆頭に、ヨーロッパのペンはプラスチックの一体成型でできていても美しく、所有する喜びを感じさせることがおおい。人気の ラミー(http://www.nshcgj.jp/brands/lamy/main.htm)や ロットリング(http://www.rotring.jp/ct_ax_01.php)などその筆頭に挙げられる。日本のメーカーは新しいタイプのインクを生み出すなど非常な緻密さを要求される職人的な能力は高いのだが、不要な要素を削ぎ落としたうえでさらに人間の感覚を満足させる品物を作り上げる能力は、欧米に水を空けられていることは否めないだろう。 フランスBic社製のボールペンなんてまったく書き味に見るべきところがないのだが、質感と存在感の点では日本のボールペンよりはるかに上だもんな。 ほんとうにもったいない。いまなんとかしてジェットストリームかパワータンクのインクを欧米のボールペンに装填できないか考えているのだけど、かなりやっかい。
かつてちょっと触れたボールペンについてようやく書きます。油性ボールペンは大昔からありますが、商品の競争が最近また新しい局面に入っているのであります。 (写真説明)これまで世話になった愛憎こもごものペンたちと、現在の主力になったキーボード 高校まではシャープペンを使っていましたが、大学にはいってノートを取るのになぜかボールペンを使うようになりました。私は書き損じがすくないほうだったし、消しクズをいちいち出すより、グジャグジャっと塗りつぶすほうが潔く思ったからだ。 消せないインクを使うことで慎重さが増して、書き損じはさらに少なくなった。いらい10年以上にわたってメインの筆記道具は油性ボールペンだった。色は青インクばかりだった。 黄色い軸に小さなオレンジ色のポッチが付いた 証券用(http://bundoki.com/?pid=1056653)というのを大学時代は好んで使っていた。安くてスリムでよかった。 次によく使ったのは パーカーのジョッター(http://store.yahoo.co.jp/ryuken-do/kpa-1103.html)である。安っぽすぎず、コンパクトでさらに優秀なことにインク(替え芯)が世界中で手に入った。このタイプの替え芯は「パーカータイプ」といってメジャーな文具メーカーがそろって発売しているので、アラスカに行こうがブラジルに行こうが替え芯がある。パラグアイのド田舎でもこのジョッターが売っていたのに驚き、さらに信用を深めて相当長期間にわたって何本も愛用してきた。フィリピンの記者時代もこれである。Tシャツの首のところに付けていても邪魔にならない軽さも便利だった。 しかし万年筆を使い始め、国産、モンブラン、パーカー、ペリカンなどを遍歴するうちに、ボールペンというのはなんと重い書き味の筆記用具かと思うようになる。とくに冬はインクの硬化がひどい。しかもパーカータイプのインクはまずほとんどの場合、使い切る前にインクの出が悪くなってオシャカになり、替え芯を投入することになる。まあボールペンはそんなもん、であって期待するほうがまちがっている──と思っていたのだが。 このボールペンに大きな変化をもたらしたのが、数年前にパイロットが出した スーパーグリップ(SUPER-GP)(http://www.pilot.co.jp/products/pen/ballpen/oil_based/super_grip/index.html)という製品だった。 それまでだいたい1.2ミリが限界だった油性インクの太文字を一気に1.6ミリにまで引き上げた。名付けて「超極太」。新開発のインクのたまものである。こんな太さにしてもペン先からのボタ落ちがなくなった。 ペン先のボールが大きくなったことでガリガリの書き味が当然だったボールペンの世界が、一気に万年筆のスラスラ世界に歩み寄った。私はこの1.6ミリがたいへん気に入って20本は買い込み、替え芯も常備していた。ペン軸に和竿の釣り竿のように糸を巻いて太さをカスタマイズしたりとにかく使った。1.6ミリもあるとインクの消費量がすさまじく、目に見えて減っていく残量を見ているのも逆になかなか心地よかったのである。 悪筆家にはペン先は太いほうがいいと思う。万年筆も太字で書くとヘタさも味のうちに見えるが、細字で書くと単なるヘタにしか見えない。 また、なぜゲルインクや水性インクに移行しなかったのかというと、まず水性は水に濡れると記録が消滅してしまう。これをおそれた。アウトドアでカヌーをやっていると荷物ごと沈(転覆)することがある。そうでなくても濡れることはしょっちゅうだ。そんなときにいちいち記録が消滅していたら話にならぬ。 さらに新聞記者時代に気付いたのだが、文字のカスレや線の濃淡が出にくい水性やゲルインクで書いた文字は、後で判読するときに読めないことがあるのだ。記者のメモというのは大急ぎで取ることが多く、めちゃくちゃな崩れ乱れ文字になっていることがしょっちゅうある。ヘナヘナの自分が書いた文字を必死で解読しなければならないことが結構あり、水性・ゲルで書いた文字は微妙な力のかかりぐあいなど「筆致」というものがわからないので油性や万年筆、鉛筆より圧倒的に判読しにくいのだ。情報量が少ない、といってもいい。 というわけで水性・ゲルにはお世話になってこなかった。 しかしこのパイロットのスーパーグリップであるが、難点はキャップ式だという点。外出したりアウトドアに出たりすることが多いとすぐになくなってしまって困った。片手がふさがっている時も困る。ノック式が発売されるかと思ったが、ついに発売されずに終わった。 次にめぐりあったのが三菱のPower Tankであった。こりゃあすごかった。(つづく)
ダナー(Danner)というアウトドア界ではわりと知られたブーツメーカーがあって、ここのをもう10年履いている。ダナーライトというゴアテックスを使ったフィールド用ブーツで、軽くて水につかっても浸水しない。カヌーをやるときには使うのは主に長靴かサンダルだが、長距離を歩く可能性があるときや長い旅ではブーツは必ず持って行った。  最初にこのブーツを見たのは長良川だった。「天下の愚行」長良川河口堰に反対するカヌーデモに参加したときだ。北海道でアリスファームを営む藤門弘さんが催しのゲストで来ていて、長身の彼がさっそうと履いていたのがこのダナーライトだった。いかにも野外の道具といった風情に心をひかれるようになり、学生にとってはかなり高い靴だったが購入を決意した。 この1足目はフィリピンに持って行ったころから熱と湿度にやられたのか水漏れがひどくなった。これまでアラスカも南米も日本の川もこの靴で歩き、靴底も張り直しながら使ってきた。価値のある靴だった。文句の付けようのないパフォーマンスだった。1足目は晴天専用に格下げされて現在にいたる。 で昨年、フィリピンから帰国して、色違いの同じダナーライト(黒)をもう1足買い足すことにしたわけだ。  このときに違いに気づいたのだが、新しいダナーライトには、アメリカ国旗柄のタグがくるぶしに付いている。こんなもの1足目を買ったときには付いてなかった。いや、よくよく見ると、1足目にも付いているのだが、星条旗はごくごく小さく、控えめにくるぶしの内側に収まっている。なんでこんなに大いばりで外側に付くようになったのか、9/11以来のアメリカの右傾化に関係しているのかと思っていた。  好きでもない星条旗タグの謎が解けたのは報道写真雑誌「デイズジャパン」の2005年11月号p23を見たときだった。  イラク戦争の一コマ、米兵の遺体を戦友が運び出している光景で、遺体のかたわらに立っている兵士の履いているデザートブーツに見たようなタグが付いていたのだ。  靴のスタイル・作りもこれはいかにもダナーくさい。 そこでダナーのHPに行ってみると、備後、いやビンゴ。ダナーはイラク戦争にかなり深入り、というよりは自主的に首まで浸かっているようです。スクロールバーも表示されない狭い トップページの中段に、イラク戦争をサポートする大きなワッペンが張られている。「YOU'VE GOT OUR BACKS. WE'LL COVER YOUR FEET.」(兵士たちよ応援しているぞ。我々は君たちの足元を守る)と、イラク戦争の報道にそろそろ付いていってない世間をよそに、完全臨戦態勢です。 いや、ダナーが日本でアウトドアブーツの会社としてしか知られていないのがおかしいのでした。ダナーはアウトドア・狩猟用はもとより、軍・警察に制式採用されているような靴をはじめとして、あらゆるワークブーツを作っている会社だったのだ。米国ダナーのサイトを開くと、ブラウザ上部には「Danner boots & shoes for hiking, work, military / police, hunting and more」と表示されます。明白に軍・警察用の靴のメーカーと謳っている。一方やっぱり、というかんじで、 ダナー・ジャパンのサイトには戦争臭はまるっきりない。 戦争は道具を進化させる。インターネットはよく知られるようにもとは米国防総省の通信網ARPANET(アーパネット)が発祥だし、私が3月に韓国でカワウソの生態調査で使った非常に高性能な小型懐中電灯 SureFireは銃身に取り付けて標的を照らし出すためのライトとして発達したものだ。サイトを読むとロサンゼルス五輪の警備用としても採用されたらしい。めちゃくちゃに明るく光が目に入るとしばらく強烈な残像が消えない。光の収束具合が絶妙で対象が非常に見やすい。難点は高価なリチウム電池を湯水のように消費してくれることと、夏は本体が猛烈に発熱しそうなことか。そうそう、ヘタをすると電池1セットで切れる替え球がバカ高い(5000円以上)のも欠点だ。この燃費の悪さを補ってあまりある高性能だからこそ使うのだが。 戦争は究極のアウトドア。アメリカ人にモノ作りをさせると「こんなものすごいもの誰が使うんだ?」というような、とんでもないオーバースペック商品を作ることが多い。たとえば衣料メーカーフィルソンのダブルマッキーノクルーザー。いちど店で手にとってみてください。あまりの厚さと重さに笑えます。さらにはゼネラルモータース(GM)の軍用車の弟ハマー。どこを走る気なんだあれは。日本人に非常に人気のあるパタゴニアが初期に名を売った商品には、自立するほど分厚い帆布で作った短パン、スタンドアップショーツがある。 とりあえず、ダナーという会社のことが分かった。イラク戦争にはハラが立つし、他社のゴアテックスブーツもそろっているので、次はあえてダナーは選ばなかもしれない。好きな女だったが、お互いのために別れたほうがよいように思う。
魂の入った道具が好きだ。いい道具でないと使う気が起きない。 もともと道具屋の息子ということもあるが、いろんなフィールドに鍛えられたところはもっと大きい。超長距離のカヌーツーリングや真剣勝負の釣り、厳寒の川の中を歩き回り夜間の写真撮影もするカワウソのフィールドワーク。いい道具に救われてきたし、ダメな道具に裏切られてもきた。準備不足に泣いたこともあった。 アウトドア道具のほかにも、万年筆・ボールペンさらにはノートなどを含めた筆記用具、カメラをはじめとする記録道具もいっしょうけんめい選んできた。(それにしてはチョンボや空振りも多い) いままで使ってきた道具の長所や短所を語るため、「フィールド道具考」というくくりをこのブログに作ることにする。 「人間、物に愛着が持てないようでは、暮らしが浅くなるぞ。『玩物喪志』という言葉があって、物をいじっているうちに志を失ってしまうことをいう。しかし、志を失わせるぐらいのいい物があるかどうか、というのが問題なんだよ。諸君。」(開高健「知的な痴的な教養講座」、集英社、1990) 「物より心」というのはひとつの真実だが、いかにして志や魂を物に込めるか。いかに物に結実させるか、というのも人生の一大事なのだ。志や魂は何かで表現しないかぎり無に等しい。
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