山形へサクランボに会いに 

 えらく間が空いてしまって失礼しました。

 6月末は2日間山形盆地を訪れた。

 山形県村山市である。雑貨店EINSHOPの取材&商談旅行である。

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 昨年山形市出身のサイトー君の結婚式に出席したおり、サクランボ農家の親戚と知遇を得た。直感的に「サクランボはEINSHOPで売れる!」と思い、「サクランボの季節になったらお邪魔します」とその場で自分のカレンダーに訪問予定を書き込んだのである。

 「サクランボドロボウ」の横行によって特に名前が知られるようになった山形のサクランボ、最高の品種とされるのは「佐藤錦」である。栽培にあきれるくらい手間がかかり、「赤い宝石」などというニックネームがついて超高級品扱いを受けている。桐箱にきれいに並べられた1キログラム入りのものは2万円を超える値段が平気で付いている。

「みんな欲しいのに、手が出ない」

 そこに道をつけるのが我が血筋たる商売人である。道をつけるのに成功すれば大きな動きになる。

 箱にそのまま放り込んだ「バラ詰め」でもネットで1キロ5000円前後するので、とてもじゃないが一般家庭で気軽に楽しめる果物ではない。消費の大部分を贈答用が占めてしまう。この現状は単価を上げるためには有効に作用すれど、サクランボがいかに美味であるかが広く一般に認知され消費の底上げをはかるためには果樹農家としては喜ぶべきことではないのではないか。

 たんに美味である以外にもサクランボはとてもおもしろい商財になる見込みがあった。たとえば、旬がほんの1週間しかないこと。こんなことほとんど誰も知らないのである。果物屋ではもっと長い期間サクランボは販売されているが、それはさまざまな品種が順繰りに並び、産地もあちこちから集まるからである。山形県の佐藤錦の旬はあくまで1週間なのである。

 しかも冬に低温が長く続く地方でないと佐藤錦はとれない。山梨県などでも栽培しているサクランボは別の品種だとのことだ。

 こういうトリビアがなかなかおもしろい。そもそも、涼しいところで栽培される果物なので、近畿以西に住んでいる人にとってはまだまだ身近じゃないのだ。

 なのに、栽培がとても面倒な果樹(果樹というのはたいてい面倒だが)なので、栽培にかかる手間を説明するだけでも、おもしろそうだ。「へえ」度数が高いのである。しかも旬が短いので、テレビなどのメディアに短期間にそうとう集中的に取り上げられる。

 道をつけるため、山形行きの夜間高速バスに乗ったのが16日の夜だった。飛行機は避けた。高速バスは早朝に到着するので時間が有効に使えるからだ。寝心地は悪いけれど、そこはどこでも寝られる体質でカバー。

 朝になったらもう山形駅前。初めて乗る奥羽本線で村山市へ。結城農園の結城文俊さんと半年ぶりの邂逅を果たす。

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 すぐに農園につれていってもらい、選果場・農園を見せてもらった。サクランボ、なかでも佐藤錦のあきれるほどめんどうな栽培がよくわかった。これじゃあ高価になるのもしかたがない。

 サクランボは雨に当たると実割れするので、5月末から6月上旬にかけて果樹を完全にビニールの矢根で覆う。そのために果樹園の上はすべて鉄骨を使って頑丈な屋根が作られている。ビニールハウスだが、側面はビニールで覆わず、鳥獣害を防ぐため網で囲んである。

 上からの日光を葉が遮ってしまわないようにサクランボにかかる葉は適度に間引く必要がある。おびただしく実っているすべての実にたいして、この作業が必要になる。とんでもない作業量だ。

 樹の根元にはいちめんに銀色の日光反射シートが敷き詰めてあった。日光を下から実に当てて色よく熟させるための配慮である。このため、ハウスの中はレフ板が完備した状態になっていてとても明るく、撮影がとてもしやすいので助かる。枝ぶりと色づきのいい実を選んでビシビシ撮影する。

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 佐藤錦にはほかの品種にない困った性質がある。自家受粉しないのである。つまり佐藤錦だけ植えていても実がつかないから、相性のいいナポレオンなど別の品種を同じハウス内に植える必要がある。すなわち、同じ面積の畑では佐藤錦は収穫量の点で圧倒的に不利なわけだ。10本のうち1─3本は別の品種を植える必要があると聞いて「そりゃ高くもなるわ」と思う。

 受粉期には効率良く花が受粉するようにミツバチを借りてくる。農協(JA)を介して養蜂家からミツバチの巣箱を賃借りしてきてハウス内に設置する。この時大事なのは気温が15度以上なければならない。花冷えが起きるとミツバチが活動しないため実付きがいっぺんに悪くなってしまう。これを避けるため受粉期にはハウスを壁で覆って中でストーブを焚く農家もあるようだ。

 こうしたいっさいがっさいが、すべてサクランボの値段に跳ね返ってくる。しかも手摘みだから一気に大量に収穫ができるわけではない。

 この収穫直前の高級サクランボを狙うのが「サクランボドロボウ」というわけだ。なるほど。

 最近は資源・鉄材が高騰しているため、鉄骨ハウス自体の値段がこの2年で2倍くらいになってしまった。「もうハウスは新しく建てられない」と結城さんが嘆く。結局はサクランボの値段のさらなる高騰という形に跳ね返ってくるのだろう。



[2008/07/02 00:57] フィールドニュース | TB(0) | CM(0)