組織バランス 

 我が社の強みは開発部でその次が営業部である。前からそうだった。

 もともとアイデアを製品にするのが得意な会社で社員のメンタリティも「どうなるかしらんけどいっぺんやってみようや」という感じである。こういうもともとの気質に新社長(おれ)のいいかげんな性格が拍車をかけている。開発が主力になるのは当然のことだ。

 それを売ってくる営業がそれに次ぐ。挑戦する開発にはミスがつきものなので、そういうアイデア製品に問題があったとき、丸く収める能力が当社の営業には高い。もともと逆境に強いのだが、昨年はチャンスにも強みを見せるようになった。

 ひるがえって他の部署はどうかというと、物流部や管理部(経理・総務)は強みにはなっていなかった。まあ中小のメーカーというのはそういうものである。作ってなんぼ売れてなんぼの自転車操業、とりあえず製品を出してそれを売ってこなければ物流も管理も意味がない。その意味では開発と営業が主力になるのはべつにおかしなことではない。

 しかし物流や管理が強みではないといっても、それがゆるされるのは「競合他社と同程度なら」という条件つきだ。

 競合他社よりレベルが劣ってしまうと、開発と営業がいくらがんばっても物流や管理部門がボトルネックになってしまって業績の足かせになってしまう。とくに企業が勢いよく成長しようとしたときに、部署間の成長バランスが取れていないと困る。


(1)開発部がいい製品を作った
(2)営業部が売り込みに成功した

まではうまく進んでも

(3)しかし売れすぎて物流部があっさり欠品させた


でジ・エンドとなる。もしくは


(1)開発部がいい製品を作った
(2)営業部が売り込みに成功した
(3)物流部も順調に出荷をしている

までうまく進んでも

(4)しかし多忙になっていく社員を管理部がケアをできず志気が低下


では次のサイクルに入っていけない。

 企業活動において、通常期には主力部門が会社の業績を規定する。しかし急成長期・好調期には非主力部門が会社の業績を規定するのだ。主力ではない部門は「強み」にまでならなくてもいいが「弱み」にしてはいけない──のである。



 また、だいじなことがある。これまでリソースを投入されてこなかった部門というのは、いったん火がつくとめちゃくちゃ伸びるのだ。

 社長就任から3年半、物流部門をテコ入れしてきた。

 とはいっても突飛なことはやっていない。外部から専門家を招いて現場改善のアドバイスをもらい、週イチのミーティングと現場めぐりで課題を把握して現場にすぐアドバイスする。必要な投資(机や棚や文房具を買ったり)をし、3カ月に1回くらい加古川駅前の三河屋で安くてうまい隠れ名物のシュークリームを買ってパートのおばちゃんたちに持っていく。

 するとこれまでテコが入っていなかっただけあってえらい勢いで伸びた。これまでそれほど工夫をしてこなかった部署は、全員がちょっと工夫をはじめるだけですべての業務がかけ算式に効率化する。

 売上げなどの数値には直結はしなくても、「これまで起きていた問題、起きておかしくない問題がみょうに起きなくなる」という形で結実しているのがよく見ておくと分かる。じつにシブい。



 開発、営業は好調で、物流部もある程度軌道に乗った。今後は管理部のテコ入れをやっていこうと思う。

 開発部や営業部ががんばっても得られるのは業績という金銭価値がメインだ。だからこそ「ビジネスにおける当社の強み」になっているわけである。

 しかし、開発と営業のおかげで会社はもうかってるけど社員はあんまり幸せそうじゃありません──というのは本末転倒だ。稼いだ金には意味はこもっていない。何にでも交換できるのが金で、だからこそ価値がある。社員の働きかたも管理部によって変えられる。

 従業員の働き方や人生のありかた、上げた収益の使い方を決めることができる。カネの意味を固定し活かすも殺すも管理部しだい。その部署を伸ばすのはひじょうに意義のあることなのだ。

 「管理部を伸ばす」「経理部を成長させる」「我が社の強みは総務にあり」とか言う人はあまりいない。だからこそやるのである。



[2018/05/02 17:56] 会社経営 / ビジネス | トラックバック(-) | コメント(-)