ムチャクチャなスポーツはそのムチャクチャさを楽しもう 

 日本代表の決勝進出がこんなに話題になるとは思わなかった。

 いやまあ、たしかに「正々堂々最後まで死力を尽くして戦う」という観点からすれば圧倒的に不細工ではある。

 しかしサッカーはそもそもルールもテキトーだし、バカみたいに広いピッチに審判が少なすぎて卑怯なプレーが見逃されがちという「遊び」が多いし、得点の少ないゲームなので強いチームがたまたま負けることも多い。逆に圧倒的に弱くてもやり方によっては勝っちゃうことがある。ゴールに手で押し込んでも主審にバレなかったら「マラドーナのゴッドハンド(神の手)」と呼んで喜ぶ。

 ようするにムチャクチャなスポーツだということだ。

 無様なスポーツだが、こんな岸和田のだんじりみたいなものにいまさらガタガタ言う方がヤボである。そんなことが気になるなら、サッカーなんか見なけりゃいいのである。他のほとんどのスポーツはもっと正々堂々と戦っているのだから。



 そもそもサッカーのワールドカップがこんなに盛り上がるのは、このやたらに競技スペースが広くて不安定で、審判が少なく、ラフプレーや反則を許容するところ、つまり弱小国でも勝つ可能性がゼロではないところに起因するのである。

 「FIFAフェアプレー」という横断幕が大会中に掲げられたりテレビ画面に出たりするが、あれはサッカー特有の風習であって、フェアプレーがここまで前面に強調されるスポーツはない。そんなもんスポーツではあたりまえだからである。

 これは、つまりサッカーにフェアプレー精神が欠けていることをFIFAみずからはしなくも表示しているわけだ。「日本代表の今回のプレーはフェアではない」みたいなことを言っている人は、残念ながら的外れである。

 FIFAもそこのところは分かっている。しかたなくビデオ判定員はもうけたが、もっとフェアプレーのためにやれることはあるけれどやっていない。「ゴールラインテクノロジー」も導入されているが、この時代にあんなアホみたいなものを「テクノロジー」などと呼ぶところに圧倒的なやましさを感じないだろうか。

 なぜ不正撲滅をやらないかというと、あんまりガチガチに正々堂々化すると、サッカーというスポーツの独自性が失われるからだ。

 ラグビーが一部の人にとってたいへんおもしろく、大多数の人にとっておもしろくないのも、あれは「弱いチームは強いチームと100回戦っても1回も勝てない」スポーツだからである。逆にいえば、ラグビーではどんな弱小チームでも100%勝てない相手にたいして正面戦を戦わされる。そういう場合、ゲームはいきおい「公開処刑」じみた残酷な場になる。

 そんなスポーツを関係者以外の誰がおもしろがるだろうか。勝つ可能性が0%のゲームを楽しむ義理などないのである。

 ラグビーは圧倒的に強者の論理で動いているスポーツであり、おもしろいのは強豪国だけだろう。しかしほかのほとんどのスポーツというより、スポーツとはそもそもそういうものである。

 だからこそ逆に、多くのスポーツの中で「強い奴がかならず勝つ優勝劣敗スポーツ」より「弱いチームでも時々勝てる偶然支配スポーツ」のほうが圧倒的に人気があるのだ。



 日本の戦いがぶざまだろうとなんだろうと、現在の代表の実力で正面戦で優勝を狙うことができないいじょう、奇策・偶然・場外乱闘を利してなんとか1つでも上位に食い込んでいくしかない。これが弱者の論理だ。

 かつて為末大が世界陸上で天候不順によるスタート延期を味方につけて3位を勝ち取ったように、日本代表はどこまでも狡猾にズルく勝っていただきたい。弱いくせに正面戦に挑んで73年前のように破滅してはいけない。

 西野監督は3戦目で6人を下げた。これはあきらかに決勝トーナメントまでに代表のレギュラー陣を完全に体力回復させ決勝で結果を残す気だ。ポーランドをセカンドメンバーでもギリギリ引き分けでかわせる可能性があると踏んだら、一気に賭けに出た。

 短期集中決戦のワールドカップでは、他の強豪国といえどもギリギリの戦いのなかで疲弊し傷つく選手が出てくる。ドイツすら予選敗退したのに象徴的なように、サッカーは流動的なスポーツなので、強豪チームすら小さな変更で大きくバランスを失うのだ。

 6人を温存すればこの「サッカーという競技の不安定さ」を突ける可能性が大きくなる。西野監督の采配というより、肝っ玉に感動した。しかしこれも大会直前に監督交代事件が起きて「どっちみち期待されてない」という開き直りが生んだものかもしれない。なにが幸いするかわからないものである。

 ふつうFIFAランキング60位の国が、ワールドカップでレギュラーを6人も下げるなんて決断はできない。おまえワールドカップなめてんのかという話だ。そして予定どおりあまり機能しなかったセカンドメンバーたちだったが、薄氷の「勝利」を得た。

 薄い薄い可能性を今のところ西野ジャパンがつなぎつづけている。

 次のベルギーどころか、決勝トーナメントに出ているチームすべてに日本はかならず負ける。正面から戦えば、だ。

 それいがいの戦い方ができるかどうかが、今回のワールドカップの醍醐味になる。気温が35度を超えたり、湿度が高かったり、どしゃぶりになったり、ケガ人がでたりしたらチャンスだ。日本サポーターも観客席の掃除とかしていないで、ベルギーチョコレートを溶かして瓶詰めにしてピッチに放り込むくらいのことはやっていただきたい。

 ピッチの外のゲームも楽しめばいいのだ。しょせんくだらなくてムチャクチャで愛すべきサッカーなんだから。


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[2018/07/01 12:48] よもやまコメント | トラックバック(-) | コメント(-)